日本森林学会誌
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総説
スギ雄花形成の機構解明と抑制技術
篠原 健司
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2010 年 92 巻 6 号 p. 304-309

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抄録

スギは我が国を代表する林業樹種である。しかし, スギ花粉症患者が激増し, 日本の社会問題になっている。全国的な疫学調査では, 花粉症の発症率は国民の25%を上回っているという。自然条件下では, スギの花芽分化は6∼8月に開始し, 7∼9月には未分化の雄花が観察できる。スギが花を咲かせ花粉を飛ばすまでには通常20年以上かかるが, 植物ホルモンの一種であるジベレリンで処理すると, 1年生の芽生えでも花芽形成が確実に誘導できる。しかし, スギの雄花形成や花粉形成についてはあまり理解されていない。最近, 森林総合研究所はスギ雄花の完全長cDNAを10,463種類収集している。この完全長cDNAには, 実験植物シロイヌナズナの雄ずいや花粉で特異的に発現する遺伝子が含まれ, その中には新規のアレルゲン遺伝子, 転写因子として働くMADSボックス遺伝子や花成制御遺伝子, 雄性不稔遺伝子など重要な機能をもつ遺伝子が多数存在した。これらの遺伝子は雄花の発達過程を理解するための重要な武器になる。本総説では, スギ雄花形成の機構解明に向けた研究の現状, ジベレリン生合成阻害剤を用いたスギ雄花形成の抑制技術の開発, 遺伝子組換え技術を用いたスギの花成制御技術や不稔化誘導技術の開発について紹介する。

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© 2010 一般社団法人 日本森林学会
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