日本森林学会誌
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総説
樹液流計測法を用いた林分蒸散量の計測
—森林管理による蒸散量の変化を評価するために—
篠原 慶規鶴田 健二久米 朋宣大槻 恭一
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2013 年 95 巻 6 号 p. 321-331

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抄録

近年, 水源涵養が, 針葉樹人工林の間伐や広葉樹林化, 竹林の伐採といった森林管理の主要な目的の一つとして位置付けられている。しかし, 森林の水資源量を評価する上で必要な蒸発散量の計測例が不足しており, 森林管理に伴う水資源量の変化は十分には評価できていない。そこで本総説では, 蒸発散量の主要要素である蒸散量の計測を促進するために, 蒸散量計測法の一つである樹液流計測法について, 計測原理や計測時の注意点について取りまとめた。まず, 森林管理に伴う蒸散量の変化を把握する上での樹液流計測法の有効性を他の蒸散量計測法と比較することで示した。次に, 樹液流計測法を用いた場合の単木蒸散量の算出方法, 単木蒸散量から林分蒸散量へのスケーリングアップの方法について既往の研究例を基に説明した。最後に, 今後, どのような森林でより計測を行う必要があるかを論じるために, 国内で樹液流計測法を用いて計測された林分蒸散量を取りまとめた。その結果, カラマツ人工林, 広葉樹林, 竹林では, データの蓄積がほとんど進んでいないこと, スギ・ヒノキ人工林では, 林齢60年以上や20年以下のデータ蓄積が望まれることが明らかとなった。

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© 2013 一般社団法人 日本森林学会
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