日本森林学会誌
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論文
スギ植栽木の樹高成長に及ぼす期首サイズと周辺雑草木の影響
山川 博美重永 英年荒木 眞岳野宮 治人
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2016 年 98 巻 5 号 p. 241-246

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抄録

スギ植栽木の樹高成長に及ぼす期首樹高および周辺雑草木の影響を明らかにし,下刈りの要否を決める簡易な判断基準を検討するため,3年次の下刈りが省略された4年生のスギ人工林において,植栽木の樹高,当年伸長量および雑草木との競争関係を個体ベースで調査した。スギ植栽木の樹高成長は,スギ樹冠に対する側方からの被圧より上方からの被圧の影響を強く受けており,植栽木の梢端部が周辺の雑草木に覆われなければ,樹高成長の低下は小さいと考えられた。また,梢端部が周辺雑草木によって覆われた植栽木では,期首樹高が低くなるほど樹高成長量が小さくなっていた。一方,期首樹高の高い植栽木では,梢端部が覆われていても,覆われていない個体と同程度の成長量を示し,成長量のばらつきも小さかった。したがって,スギ植栽木が良好な樹高成長を保つためには,植栽木の個体サイズが小さな間は,樹冠全体が覆われるような被圧は避けた方が良いと考えられた。具体的な個体サイズの指標については検討する必要があるが,期首樹高と,植栽木と雑草木の相対的な競合関係の組み合わせは下刈り要否を判断する有効な指標と考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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