日本森林学会誌
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論文
森林内の放射性セシウム分布を考慮した空間線量率の推定
今村 直広赤間 亮夫大谷 義一小林 政広坪山 良夫高橋 正通
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2017 年 99 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

森林内の様々な構成要素(樹冠や落葉層,土壌など)に分布する放射性セシウムが地上1mの空間線量率に寄与する程度を定量的に把握した。計算には,2011年から2014年までの福島県内4カ所五つの林分で取得された枝葉,落葉層,鉱質土壌層の放射性セシウム蓄積量を用いた。2011年の空間線量率は,落葉層,鉱質土壌表層(0~5cm),および自然放射線に加えて,樹冠層の寄与が大きかった。しかし,2014年には,空間線量率に対する樹冠層の寄与率は3%以下となり,落葉層と鉱質土壌表層(0~5cm),および自然放射線を合わせた寄与率が88%以上となった。このことは,2014年以降においては森林内の落葉層と鉱質土壌表層(0~5cm)および自然放射線を用いることにより,森林内の空間線量率が概ね再現できることを示唆する。また,これら林分において落葉層除去前後の空間線量率を推定したところ,事故後4年が経過した林分であっても,落葉層それ自体のガンマ線遮蔽効果よりも落葉層に含まれる放射性セシウムの除去による空間線量率の低下効果の方が高いため,落葉層の除去は森林内の空間線量率を低減させる効果があることが示された。

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© 2017 一般社団法人 日本森林学会
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