日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
ヒノキ両性不稔個体の発見
齋藤 央嗣
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 99 巻 4 号 p. 150-155

詳細
抄録

 ヒノキの花粉症対策のため,雄性不稔個体の探索を行った。神奈川県内のヒノキ林を探索した結果,雄花から花粉が飛散しない個体が発見された。花粉の飛散を調べるため,雄花がついた枝を袋に入れ水差ししたところ,飛散期を過ぎても花粉嚢が開かず,全く花粉を飛散しなかった。花粉嚢内の状況を光学顕微鏡で観察したところ,正常花粉と異なる大小の粒子が観察された。電子顕微鏡で花粉嚢内を観察したところ,正常花粉同様に花粉の表面に形成されるオービクルは観察されたものの,正常な花粉は形成されていなかった。種子の稔性を調査したところ,結実した球果は小型で,正常な種子は形成されなかった。さし木の活着率は70%であり,クローン増殖が可能であった。増殖したさし木クローンに着花した雄花も花粉を飛散せず,雄性不稔形質は増殖個体でも再現性があった。染色体数を確認したところ 2n= 22 本で2倍体であり,染色体数の異常は認められなかった。花粉四分子期の観察により,雄性不稔形質は,減数分裂時の不等分裂が原因であると推定された。雄花および球果の状況から,両性不稔個体であると判断された。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top