抄録
二脚の台の上に置かれた角材を,さまざまの条件下で (Table 1参照)鋸手に支えられたチェンソーで玉切った。そしてその際チェンソーのハンドル部位に生ずる振動加速度 (G表承)を,非接着型加速度変換器を通して,おのおのが直角な三方向別に記録し,それらを分散分析法を用いて解析した。実験は二段階に分かれている。第1段階は,チェンソー自体の特性(その馬力数,原動力の種類)がチェンソーの振動におよぼす影響を考察するために,スティール (6馬力型),ホームライト (5馬力型),電動型 (1.35馬力)を用いて予備実験を行なった。そして次の点を明らかにした (Table 2参照)。
1. チニンソーに生ずる振動は,チェンソーの馬力数や原動力の種類によって大きく支配されている。
2. 切削時に比べれば低いけれども,しかし空転時ですでにかなり高い振動加速度が生じている。
3. 左右切歯の各角度およびデップス量の不揃いは,振動加速度を増加させる。
第2段階は主実験で,供試機としてホームライトZIPを用い, Table 1の因子を直交配列表L64に割付けて64のさまざまな切削条件下で玉切実験を行なった。その結果は次のとおりである。
1. あらゆる切削条件を通じての平均振動加速度は8.4Gであり,最大値は12.9G, 最小値は5.1Gであった。この平均値を方向別に示すと, C〓:P.:C〓=2.9G:4.0G:6.7Gであった。
2. 角材の木口幅,デップス量,樹種,エンジンの回転数,交互作用角度i×回転数は1%の危険率で有意であったが,最も興味のあった角度β, iおよびその交互作用は有意でなく,他の因子 に比べればチェンソーの振動にさしたる影響を与えるものではないことが明らかになった。
3. しかし,尚角度の16の組み合わせごとの振動加速度を見ると, β=55°, i=5°の場合の7.5Gから, β=85°, i=50°の9.8Gまで2.3Gの差が現われた (Fig. 2参照)。
したがって結論としていえば,チェンソーに生ずる振動の大部分は両角度以外の要因に影響されるものであるが,チェンソーの稼動時の振動をより少なくするためには,均一な,しかも適正な角度とデップス量を保持することも必要であるといえる。