抄録
1970年4月と5月の2回,東京都八王子市林業試験場浅川実験林構内に樹種および設置法をかえて餌木を設置し,そこで捕獲したシラホシゾウ属3種 (Shirahoshizo rufescens ROELOFS; ニセマツノシラホシゾウムシ, S. pini MORIMOTO; コマツノシラホシゾウムシ, S. insidiosus ROELOFS; マツノシラホシゾウムシ)雌成虫の構成を調べた。また,すでに報告されている知見とあわせて,これら3種の生態について若干の考察をこころみた。今回の調査から得られた結果は次のようなものである。 (1) 一つの林分にアカマツとクロマツの餌木を並べて設置すると,クロマツ餌木で捕獲した3種おのおのの個体数はアカマツ餌木で捕獲した個体数にほぼ等しいか,あるいはそれよりも少し多い傾向があった。 (2) コマツノシラホシゾウムシは,餌木を半分ほど土に埋めて設置すると,埋めない餌木よりも多く捕獲された。しかし,他の2種にはそのような傾向はみられなかった。 (3) 餌木で捕獲した3種のうちニセマツノシラホシゾウムシは他の2種よりも交尾の姿勢をとっているものの割合が高く,その割合は餌木設置後時間の経過とともに低下した。 (4) 伐倒直後の餌木を設置後時間の経過した餌木のそばに設置すれば,すでにあった餌木にいた3種のうちニセマツノシラホシゾウムシだけが新しく設置した餌木へ移動したようである。