日本林学会誌
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カラマツ当年生枝の成分に関する研究 (VII)
先枯病抵抗性個体の指標としてのフェノール性成分
野村 一高岸田 昭雄
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1979 年 61 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
当年生枝中のフェノール性成分の質的・量的な生成が,環境の影響によるものなのか,遺伝的なものかを明らかにするため,苫小牧植栽の4年生の7クロ一ン,野幌植栽の15年生の4クローンより当年生枝を採集し,含有フェノール性成分をGLCで分析した。これらの立地および樹齢の範囲内では, 1年のうち採集月日が同じであれば,フェノール性成分のクローン内での量的変異は非常に小さく,質的変異はまったくなく,各クローンの各成分含有量はクローンに特徴的な値を示すことが明らかとなった。フェノール性成分の変異が先枯病抵抗性個体の指標となりうるかを調べるため,新たに抵抗性15クローン,罹病性2クローンの当年生枝を採集し,フェノール性成分をGLCで分析した。各クローンの罹病率とフェノール含有量との間ではっきりした相関関係は認められなかったが,フェノール性成分の多いクローンは常に抵抗性クローンであった。こうした結果は, GLCでカラマツ当年生枝中のフェノール性成分を分析することにより,抵抗性個体を間接的に選抜しうる可能性を示している。
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