抄録
母樹保残法更新面のコナラ当年生稚樹のガス交換特性について, 閉鎖林冠下の当年生や3年生稚樹および林縁の若木と比較した。また, 小形掘削機による地床処理にともなう土壌の圧密化が,当年生稚樹の成長にどう影響するかを調べた。当年生稚樹では, 光合成の強光阻害は, 稚樹の発生場所にかかわらず, 認められなかった。更新面の当年生稚樹の光飽和光合成速度 (Pmax) は, 林冠下の稚樹の3~4倍あり, 生育日射量にともない大きく変化した。更新面の当年生稚樹で気孔コンダクタンス (gs) の日中低下がみられたが, それほど顕著ではなかった。地床処理により, 土壌表層の容積重は, 20~40%増大した。地床処理区では, 当年生稚樹の葉は厚く, Pmaxは低かった。しかし, 当年生稚樹の日中のgsは, 地床処理区で高く保たれ, 無処理区との間で成長量にちがいはなかった。以上により,コナラ当年生稚樹は, 更新面の強光および乾燥環境によく順応し, 土壌圧密化に対しても耐性をもつと考えた。