PTSD症状を呈した複雑性悲嘆の状態にある自死遺族へのグリーフケアをチームで実践した1例を報告し,自然なグリーフワークへのサポートについて考察した。本症例は,長男の自殺という体験により正常な悲嘆過程を辿れず,PTSD症状などの多彩な症状を呈し,多剤による薬物療法を行っていた。夜間の徘徊や自殺企図からの避難目的の入院であったが,長男への自責感をはじめとする感情を整理できずに苦しむ姿を目の当たりにし,心理的介入の必要性を感じた。PTSDや複雑性悲嘆にはそれぞれ有効とされる心理療法があり,心理教育の重要性が示されている。心理教育を中心に準構造化したグリーフケアの実施,薬剤整理,安全な環境の提供を役割分担し,チームで実施したことによって症状の改善がみられた。複雑性悲嘆の状況にある自死遺族には,準構造化したグリーフケアをチームで実践することで,自然なグリーフワークへと進めることができると考えられた。