2015 年 27 巻 2 号 p. 123-130
高齢者虐待防止法には,身体的虐待,心理的虐待,性的虐待,介護等放棄,経済的虐待の5つが規定されている。このほかセルフ・ネグレクトを重視する考え方がある。セルフ・ネグレクトは独立した死亡因子とされる。認知症高齢者は記銘力や判断力低下のために経済的虐待を受けやすい。 しかし,経済的虐待は把握が困難なばかりでなく,わが国が制度上,世帯を単位として社会保険料徴収や生活保護を行っている関係上,告発困難な側面もある。通報窓口は地域包括支援センターあるいは市町村である。通報電話番号が地域割りで数多く存在し,適切な通報番号を見つけることが困難なことがある。対応においては,「加害者を援助する」視点,「家庭全体を支援する」視点が重要である。 深刻な例では加害者から被害者を分離するが,そこでの医師の役割は大きい。