2016 年 28 巻 1 号 p. 35-41
〔背景〕生体移植のドナーにはさまざまな精神・身体的問題が生じるが,レシピエントの経過とドナーの精神・身体状態の関係は明らかになっていない。〔方法〕小児生体肝移植で移植肝提供を行った167人のドナーを対象に,QOL評価尺度であるShort Form-36(SF-36)の調査を行い,レシピエントの経過が良好な群(F 群:90例),重篤な合併症もしくは後遺症を有した群(C群:23例),死亡した群(D群:4例)に分類し,3群間でSF-36の8つの下位尺度を比較した。〔結果〕117人より有効回答を得られ,レシピエントに対する続柄は両親が96.6%を占めた。SF-36の下位尺度はいずれも国民標準値を上回ったが,F群と比較して「心の健康」はD群で,「全体的健康感」はC群で有意に低かった。〔結論〕レシピエントの経過が不良な例ではドナーの精神・身体的QOLが低く,レシピエントの介護の重荷や,ドナー・レシピエント間の退行的な共生関係が影響していると考えられた。