日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
内視鏡観察が困難で長期経過観察にても指摘できなかった噴門側胃切除後の残胃進行癌の1例
布部 創也大山 繁和徳永 正則比企 直樹福永 哲瀬戸 泰之山口 俊晴
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2009 年 42 巻 5 号 p. 473-477

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抄録

 症例は79歳の男性で,11年前に早期胃癌に対し,噴門側胃切除ダブルトラクト再建を施行.その後,外来経過観察中であった.術後10年目の上部消化管内視鏡,腹部超音波検査など異常なく,一旦外来経過観察打ち切りとなった.ただし,間置空腸が長いため,残胃の観察はできていなかった.入院の2か月前より,嘔吐あり,前医受診.横行結腸浸潤を伴う,残胃の進行癌と診断され手術を施行した.手術所見では腹壁,肝臓,膵頭部,横行結腸への腫瘍の直接浸潤を認め,また挙上空腸も腫瘍に巻き込まれており,合併切除しなければ経口摂取不能と判断し,残胃,挙上空腸,横行結腸を合併切除した.ただし,洗浄細胞診が陽性であり,非治癒切除におわった.本症例は,初回術後,毎年経過観察していたにもかかわらず,内視鏡検査による残胃の観察ができず,早期には指摘できなかった.残胃の観察が十分できる再建法の工夫と,初回術後長期の経過観察が必要と思われた.

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