日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
膵体部に発生した癌肉腫の1例
藤本 大裕戸川 保藤田 邦博佐藤 保則石田 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 44 巻 2 号 p. 165-170

詳細
抄録

 症例は58歳の男性で,上腹部の痛みと体重減少にて近医受診し,腹部USにて膵体部に低エコー腫瘤を認め当院に紹介された.腹部CTにて膵体部に5cm大の造影効果の乏しい腫瘍と,末梢膵管の著明な拡張を認めたため膵体部癌と診断し,膵体尾部切除を行った.病理組織学的に腫瘍は主膵管および周囲の小範囲に浸潤性膵管癌を認める以外,浸潤部のほとんどに広範な異型の強い紡錘形細胞の増殖と線維化を認めた.各種免疫染色検査においてこれらの紡錘形細胞は間葉系マーカーに陽性を示した.以上より,膵体部に発生した癌肉腫と診断した.術後6か月経過したが,再発兆候はなく,補助化学療法としてgemcitabine投与を行っている.膵癌肉腫は極めてまれでまた治癒切除が施行された場合でも再発し,急速に進行し予後不良とされている.今後は化学療法を含めた集学的治療の確立のため,さらなる症例数の蓄積が必要と考えられた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top