2012 年 45 巻 7 号 p. 715-723
症例は76歳の男性で,2000年2月に吐血を主訴として近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて出血性胃潰瘍と診断された.内服加療を行うも吐血を繰り返すため,精査を行ったところ原発性限局性胃アミロイドーシスと診断され,2001年12月当院内科に紹介となった.化学療法や内視鏡的止血術が施行されたが,吐血による入退院を繰り返し,2010年9月吐血による6回目の入院時に,今後も出血の再燃が危惧され手術適応と判断された.当科に紹介となり,同年10月に胃全摘術を施行した.術中,通常の手術操作で胃粘膜下出血, 巨大血腫を形成し,易出血性が示唆された.術後経過は良好であり,現在外来で経過観察中である.アミロイドーシスにおける易出血性の機序はいくつか報告されているものの,消化管出血に対し胃切除が行われる例は非常にまれであり,若干の文献的考察を加え,報告する.