2014 年 47 巻 11 号 p. 704-710
症例は73歳女性で,検診にて膵腫瘍を指摘され当院受診となった.CTでは膵頭部に径25 mm大の不整形腫瘍を認め,総肝動脈,腹腔動脈に浸潤していたため,切除不能局所進行膵癌として化学療法(GEM+S-1)を行った.化学療法にて腫瘍は著明に縮小し,初診時より3年9か月後に手術目的に当科紹介となった.膵頭部は線維化により腫瘍の局在ははっきりせず,迅速病理組織学的診断にて剥離断端が陰性であることを確認し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では膵頭部の多くは境界不明瞭な線維性変化を認めていたが,一部に軽度異型核を有する部位を認め,病理組織学的部分奏効であった.現在術後1年4か月経過しているが,無再発生存中であり,初回治療時より5年間の長期生存を獲得した.局所進行膵癌の予後は非常に不良であるが,化学療法が奏効し根治切除が可能となれば,長期予後が期待できる可能性が示唆された.