2016 年 49 巻 1 号 p. nm1-nm2
あけましておめでとうございます.
本誌の編集方針は,邦文誌における最高峰のクオリティを保つこと,若手の登竜門であるため査読にあたっては教育的指導を行うこと,この2点を意識して編集委員会を行っています.会の基本理念や編集方針が頻回に変更されることは好ましいことではありませんが,時代的背景や状況の変化に応じて,より良い方向への改善を躊躇うべきではないと考えています.そのような観点から,新しい年を迎えるごとに,会誌編集委員会より年頭に基本理念を確認・周知させていただくとともに本誌の現況と今後の方向性について報告させていただくことを恒例としています.
昨年で任期満了となった石田秀行先生,竹之下誠一先生,竹山廣光先生,6年間ご尽力いただき誠にありがとうございました.厳しいけれども懇切丁寧な査読コメントにより,本当に本誌の質の向上に大きな貢献を果たしていただきました.編集委員会を代表して御礼申し上げます.そして新しい委員として浅尾高行先生,竹政伊知朗先生,山口茂樹先生をお迎えいたしました(表1).すでにWeb会議にも参加していただいております.
委員長 | 遠藤 格 | |||
委 員 | 浅尾 高行 | 池内 浩基 | 伊佐地秀司 | 上坂 克彦 |
宇山 一朗 | 太田 哲生 | 大辻 英吾 | 大坪 毅人 | |
掛地 吉弘 | 加藤 広行 | 河原秀次郎 | 新地 洋之 | |
関本 貢嗣 | 瀬戸 泰之 | 竹政伊知朗 | 猶本 良夫 | |
永野 浩昭 | 橋口陽二郎 | 長谷川博俊 | 比企 直樹 | |
福島 亮治 | 堀口 明彦 | 正木 忠彦 | 村田 幸平 | |
安田 卓司 | 山口 茂樹 | 山本 順司 | 吉田 和弘 | |
八尾 隆史(病理学) | 赤澤 宏平(統計学) | |||
English language editor | J. Patrick Barron | 小島多香子 | ||
編集幹事 | 秋山 浩利 | 田中 邦哉 |
和文誌はここ数年掲載数が減少傾向にありましたが,ようやく持ち直してきたようです(表2).2015年度の集計は2016年5月に行われる予定ですが,原著論文10編,総掲載論文数130編強に増えそうです.
年度 (5月から翌年4月まで) | 投稿数 | 掲載編数 | 掲載編数 (原著) | 掲載編数 (症例報告) | 採用率 | 不採用率 |
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1990年度 | 371 | 292 | 138 | 142 | ||
2000年度 | 292 | 185 | 40 | 134 | ||
2009年度 | 485 | 201 | 20 | 174 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 203 | 15 | 175 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 218 | 22 | 188 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 140 | 6 | 129 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 113 | 8 | 101 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 127 | 9 | 118 | 18.3% | 24.6% |
(※採用,不採用以外は,年度末の集計時点において査読中となっていたもの)
前述したように,本誌は編集方針として,若手会員の育成を掲げています.本邦の消化器外科の未来を主導するであろう医師が科学的思考法と論文にまとめる技術を磨くには最適の場です.手前味噌ではありますが,当編集委員会の委員の先生方は数多の論文を読み込んだ百戦錬磨の強者ばかりです.その読み手が自分の部下に対するのと同様に懇切丁寧なコメントを書いてくださっています.数十行にわたるコメントは中学受験の添削を思い起こさせるほどです.単に厳しいだけでなく,会員全員で若手をサポートしていこうという査読委員の先生方の熱い気持ちの表れだと思います.このコメントに真摯に応えることこそ,投稿した若手の実力向上につながると考えています.言い換えれば編集委員会は道場のようなものです.若手の先生はぜひ先輩に胸を借りるつもりで投稿をお願いいたします.だからこそ,査読者のコメントには誠実な対応をお願いいたします.コメントに対する返事は査読者のコメントの一つ一つに対応し,そして返答案ができたら必ず指導者の先生に見てもらうようにしてください.指導者の先生方におかれましても,ぜひご協力をお願いいたします.
昨年は剽窃や多重投稿が疑われるような論文はありませんでした.ただし考察の内容が引用した文献のコピー・アンド・ペーストといっても良いほど酷似しているという指摘を受けた原稿がありました.査読者の先生が気付いたため良かったのですが,疑義を招くような表現は避けてください.そして指導者の先生も内容を保証している以上,しっかりと指導していただくようにお願いいたします.
昨年の年頭の挨拶でも言及しましたが,原著論文の大多数は人を対象とする医学研究であるため,新しい倫理指針に応じた記載が必要になりますのでよろしくお願いいたします.症例報告では,ときおり保険適応外の診療と判断される手技や薬物治療が問題になります.当該施設の倫理委員会で承認されていることは当然であり,その登録番号の記載が望ましいと思います.さらに当該診療行為の費用について病院が全額負担することが明記されていることも必要となります.昨年の投稿論文では問題となった論文はありませんでしたが,今後も遵守して頂きたいと思います.多重投稿に対する対応はCOPE(Committee On Publication Ethics: http://publicationethics.org/)のフローチャートに従って行われます.迷った場合は『出版倫理』の項をぜひ参考にされることをお勧めいたします.
以上,日本消化器外科学会会誌編集委員会の2016年年頭における基本方針について,確認の意味を込めて記しました.本誌の基本理念である『和文誌の最高峰を維持する』『若手消化器外科医の登竜門』という理念を堅持し,委員の先生方とともに精励してまいる所存であります.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 遠藤 格)
(2016年1月)