抄録
症例は66歳の男性で,腹部CTにて左内腸骨動脈近傍に23 mmの腫瘤を偶然指摘された.既往に23年前7 mm直腸カルチノイドに対する経肛門的切除術があった.直腸カルチノイドの左側方リンパ節転移を疑い摘出術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査所見では,腫瘍細胞は胞巣状に増生し,基底層側にpalisadingが見られた.クロモグラニンA陰性,シナプトフィジン強陽性,CD56強陽性,Ki-67 2%,核分裂像0/10HPFであり,neuroendocrine tumor(以下,NETと略記)G1の所見であった.23年前の摘出標本を免疫染色検査で再検したところ,同様の所見であったためNET G1の異時性リンパ節転移であると診断した.10 mm以下,脈管侵襲のないNET G1がリンパ節転移を来す例や,10年以上の経過で異時性転移を来す例は非常にまれであり,貴重であるため報告する.