抄録
目的:急性虫垂炎重症度予測におけるプロカルシトニン値(procalcitonin;以下,PCTと略記)の有用性について検討した.対象と方法:2013年8月~2014年12月までに急性虫垂炎の診断で手術を行った158例中,術前にPCTが測定されていた71例を対象とした.重症度は術後病理組織学的所見により穿孔性虫垂炎および壊疽性虫垂炎を重症群,蜂窩識炎性虫垂炎およびカタル性虫垂炎を軽傷群と定義した.年齢,性別,発症から受診までの経過日数,体温,糞石や術前膿瘍形成の有無,血液検査所見(白血球,CRP,PCT,乳酸値),虫垂径のうち重症度に関与した因子を後方視的に検討した.結果:全71例中,軽傷群は44例,重症群は27例であった.年齢,発症から手術までの経過時間,体温,CRP,PCT,虫垂径が重症群で有意差を認めた.有意差を認めた因子のreceiver operating characteristic analysis(以下,ROCと略記)曲線では,PCTの曲線下面積(area under the curve;以下,AUCと略記)が0.903(95%信頼区間;0.84~0.96)であり,他因子のAUCより高値であった.ROC曲線から測定された重症群PCT値のcut off値は0.12 pg/mlであり,PCT <0.12 ng/mlを陰性,PCT ≥0.12 ng/mlを陽性としたときの感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ88.8%,84.1%,75%,92.5%であった.結語:PCTは急性虫垂炎の重症度予測において有用な指標になりうる可能性が示唆された.