2018 年 51 巻 1 号 p. 57-64
症例は47歳の女性で,黄疸を主訴に肝門部胆管癌の診断で当院紹介受診された.腹部造影CTやERCP,step biopsyで内側区域胆管から左右肝管合流部での胆管閉塞所見を認め,また前・後区域胆管の閉塞は見られなかったものの後区域胆管への浸潤所見が見られ肝右三区域切除術を予定した.予定残肝量が21.4%であったため,門脈塞栓術を計3回施行した結果,予想残肝indocyanine green消失率0.035へ増加したため手術可能と判断した.術中門脈圧が18mmHgで,切除後門脈圧亢進症が予想された.術後門脈圧の亢進による肝不全を危惧して,脾摘術を追加して門脈圧調節を行い,重篤な合併症なく退院した.脾摘術による門脈圧のコントロールが致死的な肝不全を回避しえた可能性を示唆する症例を経験した.