日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
上部消化管術後の穿孔部と縫合不全部に対しover the scope clipによる閉鎖が奏効した2例
濱野 梨絵村田 幸平長生 幸司湯口 清徳美濃地 貴之北原 知洋岡村 修福地 成晃戎井 力横内 秀起衣田 誠克
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キーワード: OTSC, 縫合不全, 消化管穿孔
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2018 年 51 巻 4 号 p. 318-326

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抄録

上部消化管術後の縫合不全は比較的頻度の高い合併症であり,治療はドレナージと栄養管理が主だが,肉芽組織が増生して完治するには長期間を要する場合もあることが難点である.近年,over the scope clip(以下,OTSCと略記)を用いて消化管壁を全層で閉鎖することにより,外科手術後の瘻孔をより早期に閉鎖できる可能性が知られ始めた.我々は,上部消化管術後の穿孔や縫合不全に対しOTSCを用いて瘻孔閉鎖が得られた2例を経験した.症例1ではOTSC施行直後から,症例2では施行後3日で完全閉鎖が得られた.OTSCは,内視鏡で縫合不全部を閉鎖するという従来の治療法とは異なる積極的な治療であり,肉芽組織の増生を待つ時間が大きく短縮され,結果として入院期間の短縮や患者負担の軽減につながることが期待される.OTSCによる瘻孔閉鎖は術後合併症に対する治療法として新たな選択肢となりうると考えられた.

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