2019 Volume 52 Issue 11 Pages 679-686
症例は78歳の女性で,66歳時に直腸癌RbPに対しMiles手術を施行し,最終診断はpT3(SS)N0M0,pStage IIであった.71歳時に傍ストーマヘルニアを認め,Composix meshを用いたkeyhole法によるヘルニア修復術を施行するも,72歳時に再発を認め,他院で再度Composix meshを用いたkeyhole法によるヘルニア修復術を施行された.今回,腹痛を主訴に受診し,腹部CTで挙上結腸穿孔によるメッシュ感染と診断し,絶食,経皮的膿瘍ドレナージ,抗生剤治療を開始した.栄養状態改善目的に,腹腔鏡下横行結腸単孔式人工肛門造設術を施行するも,術後に膿瘍腔への小腸瘻形成を認めたため,メッシュ除去術を施行した.経過良好で,術後43日目に退院した.術後,感染の再燃は認めていない.傍ストーマヘルニア修復術後にメッシュ感染を認めた場合は,早期のメッシュ除去を検討するべきである.
We report a case of mesh infection by stomal perforation after recurrent parastomal hernia repair using the keyhole technique. The patient was a 78-year-old woman. She underwent Miles operation for rectal cancer [stage pT3(SS)N0, M0] at the age of 66. She was given a diagnosis of parastomal hernia at the age of 71, and the hernia was repaired using a keyhole technique. However, recurrence of parastomal hernia occurred at the age of 72, and was repaired again using a similar technique. When she was 78 years old, she presented with abdominal pain and visited our hospital. Abdominal CT revealed mesh infection by stomal perforation. She began fasting and was initiated on antibiotics; drainage therapy was performed. A laparoscopic stoma was created in the transverse colon for the purpose of improving her state of nutrition. After the operation, she was given a diagnosis of a fistula from the small intestine to the parastomal abscesses. The mesh was surgically removed. The patient’s postoperative course was uneventful, and she was discharged on postoperative day 43. No recurrence of abscess formation has been observed on follow-up. Thus, we should address and perform mesh removal operations quickly if mesh infections are diagnosed after parastomal hernia repair.
傍ストーマヘルニアはストーマ造設後の合併症の一つであり,その頻度は1.8~48.1%と報告されている1).近年傍ストーマヘルニアに対するメッシュを用いた修復術の報告が散見されるようになり,その短期での成績や安全性が報告されている.しかしながら,メッシュ感染を含む長期成績の報告は少ない.今回,再発傍ストーマヘルニア術後に挙上結腸穿孔によるメッシュ感染を生じた1例を経験したため,報告する.
患者:78歳,女性.
主訴:発熱,腹痛
既往歴:糖尿病,狭心症,直腸癌 RbP,pT3(SS)N0M0,pStage II(66歳Miles手術),傍ストーマヘルニア(71歳,72歳 傍ストーマヘルニア修復術 keyhole法Composix mesh 21×16 cm,27×22 cm使用).
内服歴:インスリングラルギン,バイアスピリン,クロピドグレル
現病歴:2017年6月頃より発熱を認め,7月下旬に腹痛も伴うようになったため,当科を受診した.
現症:身長150 cm,体重60 kg.BMI 26.7.血圧144/70 mmHg,脈拍100回/分,体温38.8°C.左下腹部に人工肛門を認め,周囲に軽度圧痛を認めた.人工肛門自体の色調は良好で,少量の排便,排ガスを認めた.
血液検査所見:WBC 7,100/μl,CRP 11.1 mg/dlと炎症反応の上昇を認め,HbA1c 9.1と血糖コントロールは不良であった.TP 7.0 g/dlと正常であったが,Alb 2.8 g/dlと低値であった.
腹部造影CT所見:挙上結腸周囲の脂肪織濃度上昇,メッシュ周囲にfree airを認めた(Fig. 1).

Abdominal CT scan showed disproportionate fat stranding and free air surrounding the stoma and Composix mesh.
以上より,挙上結腸穿孔による遅発性メッシュ感染の診断とし,入院加療の方針とした.
入院後経過:広範囲のメッシュの除去および人工肛門の再造設は高侵襲であると考えられたため,患者・家族の同意を得たうえで,絶食,中心静脈栄養,抗菌薬投与による治療を開始した.入院後7日目の採血で白血球10,800/μl,CRP 35.0 mg/dlと上昇を認めた.また,TP 5.5 g/dl,Alb 1.3 g/dlと低下傾向であった.CTを撮影すると,膿瘍腔が著明に拡大しており(Fig. 2),上腹部正中および下腹部正中より膿瘍ドレナージを施行し,ドレーンを留置した.その際のドレーン造影では,穿孔部位の特定は不可能であった.また,内視鏡検査に関しては,CTで挙上結腸近傍での穿孔が推察されたことに加え,内視鏡挿入によりさらなる穿孔部位の拡大が危惧されたため,施行しなかった.入院後21日目の血液検査では白血球5,500/μl,CRP 1.55 mg/dlと炎症反応は低下し,TP 7.1 g/dl,Alb 1.9 g/dlとやや上昇傾向であった.CTでは膿瘍腔の著明な縮小を認めた.二期的にメッシュ除去を行うことを考慮し,入院後30日目に経口摂取再開および栄養状態改善目的に腹腔鏡下単孔式横行結腸人工肛門造設術を施行した.右上腹部よりoptimal法で腹腔内にアプローチし,腹腔内を観察すると,下腹部正中に小腸の癒着を認めた.腹腔内で自動縫合器を用い,横行結腸を離断し,口側結腸で右上腹部に人工肛門を造設した(手術時間115分,出血量24 ml).

Abdominal CT scan showed a large abscess below the abdominal wall. a) Stoma level. b) Upper abdominal level. c) Lower abdominal level.
術後経過1:術後3日目に食事摂取を開始したが,ストーマ周囲膿瘍を認め,術後10日目に絶食とした.抗生剤投与で改善を認めたため,術後17日目に食事再開とした.しかしながら,術後35日目に膿瘍腔ドレーンの性状が黄緑色に変化したため,ドレーン造影を施行すると,膿瘍腔より小腸が造影され,小腸瘻と診断した.保存的治療での改善は望めないと判断し,患者・家族に十分に説明し,同意を得たうえで,手術の方針とした.
再手術所見:上中下腹部正中切開でアプローチした(Fig. 3a).膿瘍腔へ到達し,以前の傍ストーマヘルニア修復術に使用した2枚のComposix meshを確認した(Fig. 3b).メッシュと周囲の癒着は軽度であり,メッシュの折れ返りや腹腔内への露出は認めなかった.メッシュを翻転すると,挙上結腸はkeyhole部の口側近傍で離断されていた(Fig. 3c).挙上結腸自体の血流は腸間膜を介して維持されていたため,超音波凝固切開装置で腸間膜および血管を処理した.また,膿瘍腔の尾側方向に小腸瘻を認めた(Fig. 3d).前回手術時に離断した肛門側横行結腸から挙上結腸,瘻孔形成を認めた小腸およびメッシュを一塊にして摘出した.腹壁は全層減張縫合で閉鎖した(手術時間230分,出血量838 ml).

a) Preoperative abdominal schema of the patient. b) These were Composix meshes in the abscess. c) Operative findings revealed the disconnection of the stoma. d) Operative findings revealed the fistula of the ileum.
摘出標本所見:メッシュのkeyhole部と挙上結腸が非吸収糸で強固に固定され,その口側近傍で挙上結腸が離断されていた(Fig. 4).

a) Resected specimen of the infected meshes, transverse colon and a part of the ileum. b) Resected specimen showed that the stoma was disconnected at the oral side of the fixation of the mesh and colon.
術後経過2:再手術後5日目に食事を再開し,再手術後7日目にドレーンを抜去した.正中創に創部感染および創傷治癒不全を認めたが,局所陰圧閉鎖療法を施行し,再手術後43日目に退院した.退院後,ヘルニアの再発や感染の再燃を認めていない.
傍ストーマヘルニアはストーマ造設後の合併症の一つであり,その頻度は1.8~48.1%と報告されている1).傍ストーマヘルニアの原因として,患者因子と手術因子が挙げられている2)3).患者因子は,高齢,創感染,慢性閉塞性肺疾患,肥満,栄養失調,免疫不全,悪性疾患,炎症性腸疾患などが挙げられている.また,手術因子としては,緊急手術,過剰な筋膜切開などが挙げられている.手術方法は,筋膜縫縮術,人工肛門再造設術,メッシュを用いたtension free法による修復術に分かれる.再発率は,筋膜縫縮術で69.4~76.0%4)5),人工肛門再造設術で約50%1),メッシュによる修復術では6.9~17.2%5)と報告され,近年はその再発率の低さから,メッシュを用いたtension free法が選択されることが多くなっている.メッシュに関してはpolypropylene mesh(PPM)6)や腹腔内臓器への癒着防止のためexpanded polytetrafluoroethylene(以下,ePTFEと略記)7)を使用した報告が増えてきている5).主な術式として,鍵穴様のスリットを入れたメッシュに挙上腸管を通しヘルニア門を覆うkeyhole法5),挙上腸管を後腹膜経路とするようにメッシュでヘルニア門を覆うSugarbaker法8),そしてkeyhole法とSugarbaker法を組み合わせたsandwich法9)が挙げられる.再発率は,keyhole法で7.2~11.6%,Sugerbaker法で11.6~15.0%,sandwich法で2.1%と報告されている5).さらに,新たなアプローチ法として腹腔鏡下での手術の安全性も報告されている5)10).
メッシュによる修復術における合併症は,腸管損傷,腸閉塞,創部感染,メッシュ感染,腹腔内臓器との癒着などが問題となることがある5).メッシュ感染の頻度は2.2~2.7%と報告されており5),原因としてはメッシュ留置時の細菌のcontaminationが多いと考えられるが,メッシュ自体が腸管損傷の原因となり,メッシュ感染が生じる症例も少数ではあるが報告されている11)12).治療方法には一定の見解は得られていないが,メッシュ除去,洗浄ドレナージ,ストーマ再造設が挙げられる.
医学中央雑誌(1964年~2018年),PubMed(1950年~2018年)で,「傍ストーマヘルニア」,「メッシュ感染」で検索したところ(会議録を除く),傍ストーマヘルニア修復術術後にメッシュ感染を生じた報告例を15例認めた9)11)~20)(自験例を含む)(Table 1).ストーマの作成部位は,結腸が8例(53.3%),小腸が1例(6.7%)であった.アプローチ方法は開腹が7例(46.7%),腹腔鏡が7例(46.7%)であった.メッシュの種類は,polypropylene meshが4例(26.7%),ePTFE dual meshが4例(26.7%),Gore-Tex dual meshが2例(13.3%),Composix mesh(polypropylene meshとePTFEの2層構造)は本症例の1例(6.7%)であった.留置部位は腹腔内が10例(66.7%),腹膜前が2例(13.3%),筋膜前が1例(6.7%)であった.傍ストーマヘルニア修復術後からメッシュ感染の発症までの期間は,平均25.6か月(2~72か月)であった.メッシュ感染の原因として,皮膚瘻形成が3例(20.0%),メッシュによる腸管損傷が2例(13.3%)であった.治療方法は,1例を除き全ての症例において,メッシュ除去術が施行された.メッシュ感染の診断から手術治療までに要した期間は平均7.6か月間(0~24か月)であったが,腸管損傷や腸管との瘻孔形成を伴うメッシュ感染の3例(本症例を含む)に関しては2か月以内にメッシュ除去術が施行されていた11)12).
| No | Author/Year | Age/Sex | Type of stoma | Approach | Technique | Mesh | Position of mesh | Cause of infection | Time to mesh infection (months) | Treatment | Time to surgery (months) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Morris-Stiff13)/1998 | 48F | ileostomy | open | others | polypropylene mesh | intra-peritoneal | ND | 36 | removal mesh | ND |
| 2 | Aldridge11)/2001 | 85M | colostomy | open | others | polypropylene mesh | pre-peritoneal | mesh erosion into the colostomy | 8 | removal mesh | emergency |
| 3 | Geisler12)/2003 | ND | colostomy | open | ND | ND | ND | mesh erosion into the colostomy | 2 | removal mesh | 2 |
| 4 | de Ruiter14)/2005 | ND | colostomy | open | others | polypropylene mesh | pre-faschia | ND | 23 | ND | ND |
| 5 | McLemore15)/2007 | ND | ND | laparoscopy | ND | ePTFE dual mesh | intra-peritoneal | anovaginal fistula | 4 | removal mesh | ND |
| 6 | McLemore15)/2007 | ND | ND | laparoscopy | ND | ePTFE dual mesh | intra-peritoneal | cutaneous fistula by radiation for ovarian cancer | 4 | removal mesh | ND |
| 7 | Berger9)/2007 | ND | ND | laparoscopy | ND | ND | intra-peritoneal | ND | ND | drainage | ND |
| 8 | Mancini16)/2007 | ND | colostomy | laparoscopy | sugerbaker | ePTFE dual mesh | intra-peritoneal | ND | 9 | removal mesh | ND |
| 9 | Lüning17)/2009 | ND | colostomy | open | others | polypropylene mesh | pre-faschia | contamination | ND | removal mesh | 12 |
| 10 | Hansson18)/2009 | ND | ND | laparoscopy | keyhole | Gore-Tex dual mesh | intra-peritoneal | ND | ND | removal mesh | ND |
| 11 | Hansson18)/2009 | ND | ND | laparoscopy | keyhole | Gore-Tex dual mesh | intra-peritoneal | ND | ND | removal mesh | ND |
| 12 | Hamamoto19)/2010 | 76M | colostomy | open | ND | ND | intra-peritoneal | surgical site infection | 72 | removal mesh | 24 |
| 13 | Oma20)/2018 | ND | colostomy | laparoscopy | sugerbaker | ePTFE dual mesh | intra-peritoneal | stomal fistula | ND | removal mesh | ND |
| 14 | Oma20)/2018 | ND | ND | ND | ND | ND | ND | ND | ND | ND | ND |
| 15 | Our case | 78F | colostomy | open | keyhole | Composix mesh | intra-peritoneal | stomal perforation | 72 | removal mesh | 2 |
ND: not described
Composix mesh は組織の癒着を防止するePTFEと組織との親和性が高いpolypropylene meshから成り,再発率の低下や癒着防止において有効性が報告されている21).しかしながら,メッシュの収縮によるkeyholeの開大やkeyhole部に集中的に圧力がかかることが再発の原因と報告されている18).したがって,可能なかぎりメッシュのkeyhole部分と腸管との間を密にするため,メッシュと腸管を非吸収糸で縫合固定する報告22)がある.一方で,不用意な腸管損傷によるメッシュ感染を回避するため縫合固定はしないとする報告23)もあり,一定の見解は得られていない.
また,polypropylene meshの露出部位に腸管が接触することで,腸管損傷を来した症例11)も報告されている.Composix meshを使用する際に,腸管損傷予防目的に,keyhole部分のpolypropylene側をePTFE側よりも半径5 mm程度小さくトリミングし,露出したpolypropyleneをePTFEで全周性に被覆した症例24)も報告されている.本症例は,Composix meshを複数使用し,初回手術では2-0 PROLENE®を用いkeyhole部分と結腸壁を全周性に固定している.一方,2回目の手術では固定を行っていない.したがって,初回手術で留置されたメッシュは腸管に強固に固定されていたが,2回目の手術で留置されたメッシュは腸管には固定されておらず,2枚のメッシュが外力によりずれやすい状況であり,keyhole部分のずれにより挙上結腸に裁断するような力がかかってしまった可能性がある.また,keyhole部分のpolypropylene meshの露出に対し,ePTFEで被覆するなどの腸管損傷に対する対策を講じていなかったため,腸管損傷が起きやすい状況であったと考えられる.さらに,今回の入院前に比較的短期間での体重増加を認めており,腹壁とメッシュに対し,よりずれが生じやすい状況であったと考えられる.
再発傍ストーマヘルニアに対しては,安易に複数のmeshを重ねてkeyhole法を施行するべきではなく,状況に応じてSugerbaker法やsandwich法などの術式を検討すべきであると考える.
メッシュ除去術の時期については,全身状態,感染の重症度を適切に判断し,併存疾患や耐術能を十分に評価したうえで,可能なかぎり早期に行われるべきであると考える.本症例においては,メッシュ感染と診断した時点では,炎症反応は高値であったが比較的全身状態は良好であった.また,狭心症,糖尿病,肥満などの複数の併存疾患を認めたため,耐術能や術後合併症を考慮し,抗菌薬による保存的加療を第一選択とした.その後,膿瘍ドレナージによる感染コントロールおよび栄養状態改善後の二期的手術を目指したが,炎症反応高値および低栄養状態が遷延し,さらに膿瘍腔への小腸瘻を認めたため,メッシュ除去術を施行した.これまでの報告例では,1例9)を除き全例でメッシュ摘出術が施行されており,本症例においては,より早期かつ一期的なメッシュ除去,洗浄ドレナージ,ストーマ移設を検討すべきであったと考える.
今後,本邦においてもメッシュを使用した傍ストーマヘルニア修復手術がさらに普及することが予想され,自験例と同様の症例が増加する可能性がある.術後長期間を経過した後も,遅発性のメッシュ感染の可能性があることを考慮し,経過観察を行うべきであると考えられる.また,メッシュ感染と診断した際には,患者の全身状態を適切に評価したうえで,早期のメッシュ摘出を検討すべきである.
利益相反:なし