日本消化器外科学会雑誌
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原著
当院における切除不能膵癌に対するconversion surgeryの治療成績と術後補助化学療法の重要性
山田 大作高橋 秀典向井 洋介飛鳥井 慶長谷川 慎一郎和田 浩志松田 宙安井 昌義大森 健宮田 博志
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2021 年 54 巻 10 号 p. 665-678

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抄録

目的:切除不能膵癌症例に対する当センターの治療成績について後方視的に検討した.方法:診断時に膵癌取扱い規約第7版で規定される切除不能膵癌であった症例のうち,先行内科的治療後に施行した根治的膵切除をconversion surgery(以下,CSと略記)と定義した.2011年から当センターにおいて行われた43例のCSの治療成績について,短期手術成績と長期手術成績を調べ,これら治療成績と患者因子,腫瘍因子,治療因子との関連について検討した.結果:局所進行が42例,遠隔転移が2例含まれていた.先行治療として抗癌剤治療に放射線治療を併用した症例は39例であった.先行治療期間は,動脈合併切除によって治癒切除可能と判断した症例には半年以内,それ以外の症例には8か月以上の治療観察期間を基本とした.術後中央観察期間は17か月であり,3年生存率は62%であった.手術は膵頭十二指腸切除術を24例に施行し,28例に主要血管合併切除を要し,42例がR0手術となった.重篤な術後合併症はなく,術後補助化学療法は77%に施行され,術後無再発期間の中央値は14か月であった.全生存期間および無再発生存期間の検討では,どちらの検討でも先行治療後CA19-9正常化,術後補助療法完遂の2因子が独立した予後良好因子として示された.結語:CSは一定の長期生存が得られるが,CS後も補助化学療法が重要である可能性が示された.

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