2021 年 54 巻 6 号 p. 408-415
膵管癒合不全に合併した膵管内乳頭粘液性腺腫(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)由来浸潤癌と併存膵癌の重複癌を経験したので報告する.症例は73歳の男性で,心窩部不快感を自覚し当院紹介となった.内視鏡的逆行性胆管膵管造影にて主乳頭から囊胞状に拡張したWirsung管が描出され,膵管内乳頭粘液性腫瘍を認めた.副乳頭からの造影ではSantrini管から尾部へ続く主膵管が描出され,Wirsung管との交通は認めず,膵管癒合不全と診断した.膵体部主膵管に狭窄を認めた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,病理組織学的検査にて,膵頭部病変はIPMN由来膵癌,膵体部病変は併存膵癌と診断された.本症例のように膵管癒合不全にIPMN由来浸潤癌とIPMN併存癌を認めるまれな場合もあり,術前に膵全体を精査し慎重に術式を決定する必要がある.