2021 年 54 巻 9 号 p. 587-594
症例は72歳の男性で,胃癌に対して開腹胃全摘術を施行し,術後3日目に意識消失に続き心肺停止状態となった.心肺蘇生を開始し経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;以下,PCPSと略記)を導入した後に,心臓超音波検査での右室拡大,左室圧排像より急性肺血栓塞栓症を疑い,造影CTにて両側肺動脈の巨大塞栓像を認め,急性肺血栓塞栓症と診断した.胃癌術後3日目であることから,術後の出血リスクを考慮し血栓溶解療法ではなく外科的血栓除去術を施行した.血栓摘除直後より血行動態および酸素化の改善を認めた.術後の経過中に肺膿瘍を合併し入院が長期化したが,神経学的な後遺症は認めず,血栓除去術後52日目に自宅退院した.胃癌術後に心肺停止に至る急性肺血栓塞栓症を発症し,PCPSによる早期心肺蘇生および外科的血栓除去術により救命しえた症例を経験したため報告する.