2023 Volume 56 Issue 1 Pages nm1-nm4
毎年恒例の会誌編集委員会からの年頭のご挨拶及び,本誌の現況についてご報告させていただきたいと思います.
Covid-19感染発症は相変わらずではありますが,重症化する症例の割合も多くなく,経済などは少しずつ動き出しているというのが2022年の感想です.当委員会では2014年からWebEx,2019年よりZoomを使った会議を開始していますが,現在もスムーズに毎月行われる編集委員会が運営されています.一方では編集委員の入れ替えにもかかわらず,対面で会ったことのない編集委員同士がディスカッションをWEB上で行うということが生じており,その人柄などを対面で会うことで理解した上での作業とは異なるように思います.本年度にはWEB会議の形は残しつつ,少なくとも年2回程度は編集委員が対面で会う機会を設けたいと思っております.
昨年,上部より1人,本山 悟先生,肝胆膵より2人,大塚将之先生,廣野誠子先生,合計3人の先生が任期満了となり,退任されました.長い任期の間,熱心にご指導と編集委員会への出席,ありがとうございました.そして,新しく,佐伯浩司先生(上部),髙見裕子先生,石沢武彰先生(肝胆膵)の3名の先生方にご就任いただきました.(表1).今後も末永くよろしくお願いしたいと思います.
委員長 | 比企 直樹 | |||
委員 | 秋吉 高志 | 石沢 武彰 | 石原聡一郎 | 市川 大輔 |
上野 秀樹 | 江口 晋 | 遠藤 格 | 沖 英次 | |
窪田 健 | 黒川 幸典 | 小林 宏寿 | 齋浦 明夫 | |
佐伯 浩司 | 里井 壯平 | 塩崎 敦 | 大幸 宏幸 | |
髙見 裕子 | 瀧口 修司 | 竹内 裕也 | 藤井 努 | |
丸橋 繁 | 水島 恒和 | 山下 継史 | 山本聖一郎 | |
吉川 幸造 | 渡邉 純 | |||
牛久 哲男(病理学) | 全 陽(病理学) | |||
伴 慎一(病理学) | 森田 智視(統計学) | |||
編集幹事 | 新原 正大 | 樋口 格 |
本誌の採用論文数の年次推移を,表2に示します.投稿論文数は10年間で緩やかに減少しておりました.2020年度は増加しましたが再び微減に転じております.
年度(5月から翌年4月まで) | 論文投稿数 | 採用率 | 不採用率 |
---|---|---|---|
2009年度 | 485 | 35.9% | 42.9% |
2010年度 | 443 | 29.8% | 47.6% |
2011年度 | 353 | 23.2% | 54.1% |
2012年度 | 319 | 23.5% | 52.4% |
2013年度 | 275 | 17.8% | 42.6% |
2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
2017年度 | 183 | 36.6% | 49.2% |
2018年度 | 176 | 39.2% | 44.3% |
2019年度 | 167 | 57.5% | 30.5% |
2020年度 | 199 | 43.2% | 40.2% |
2021年度 | 144 | 47.2% | 41.7% |
※採用,不採用以外は,査読中となっているものです.
2022年(55巻)の掲載論文数は合計で94編であり,昨年の2021年(54巻)の109編より減少しました(表3).一方,採用率は2020年度の43.2%に対して,2021年度では47.2%と増加しており,編集委員の先生方の粘り強い査読の結果に拠るものと考えます.
年 | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年(42巻) | 22 | 0 | 176 | 5 | 1 | 204 |
2010年(43巻) | 17 | 2 | 175 | 9 | 0 | 203 |
2011年(44巻) | 23 | 0 | 191 | 13 | 0 | 227 |
2012年(45巻) | 7 | 0 | 150 | 3 | 0 | 160 |
2013年(46巻) | 7 | 0 | 110 | 6 | 1 | 124 |
2014年(47巻) | 10 | 0 | 98 | 0 | 0 | 108 |
2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
2018年(51巻) | 5 | 0 | 92 | 3 | 0 | 100 |
2019年(52巻) | 9 | 0 | 76 | 3 | 0 | 88 |
2020年(53巻) | 6 | 1 | 86 | 2 | 0 | 95 |
2021年(54巻) | 11 | 0 | 95 | 3 | 0 | 109 |
2022年(55巻) | 9 | 0 | 83 | 1 | 1 | 94 |
※一般投稿論文の掲載数.Editorial,Letter to the editor,特別寄稿,特別報告などは除く.
本誌の全文PDF+HTMLへのアクセス数は,アクセス数の増加で2020年12月集計の628,498件に対して,2021年12月では597,610件と安定して50万アクセスを超えております.(前年度:631,017件,前々年度 545,116件,前々々年度:547,079件).
本誌は1969年に村上忠重先生を初代委員長として創刊されました(表4).編集委員長の任期は第2代の鍋谷欣市先生の14年間が最長となりますが,近年では3~5年のことが多く,第6代の桑野博行先生,第7代の遠藤格先生は6年間務められました.以前は印刷した原稿を風呂敷包みで編集委員会に持参されていたと伺っております.2010年には事務局が茅場町から新富町へ,2017年に新富町より三田に移転し,オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化し,サイトからPDFをダウンロードして査読するスタイルに移行し,現在のWeb会議のスタイルになりました.2019年には優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムの刷新を行いました.2020年は特別報告「オペレコを極める」の通年掲載,Editorial Kickの導入などの試みを行った年でもございました.2021年は特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討を行った年でもございました.2022年には「私の工夫」第一報が掲載され,これ以降も「私の工夫」の企画へ投稿され,これらが査読中であります.
1968年 | 日本消化器外科学会発足. |
1969年 | 初代委員長 村上 忠重,日本消化器外科学会雑誌第1巻第1号発行. |
1970年 | 事務所移転(横浜市立大学第二外科→東京女子医科大学消化器病センター) |
1976年 | 日本医学会加盟. |
1979年 | 担当理事 長尾 房大,第二代委員長 鍋谷 欣市 |
1982年 | 事務所移転(九段南) |
1987年 | 担当理事 杉浦 光雄 |
1988年 | 担当理事 岩崎 洋治 |
1989年 | 英文要旨を追加. |
1991年 | 担当理事 大原 毅 |
1993年 | 担当理事 鈴木 博孝,第三代委員長 大原 毅,誓約書を追加. |
1995年 | 論文種目「臨床経験」を追加. |
1997年 | 表紙をデザイン化,編集後記の掲載を開始. |
1998年 | 担当理事 嶋田 紘,第四代委員長 佐治 重豊,著者名を10名以内に限定,入会免除依頼の受け付けを開始(病理医などの他科を想定). |
2000年 | 論文種目「総説」を追加,査読希望領域欄を追加,学会公式サイトを公開. |
2001年 | 第五代委員長 上西 紀夫,査読体制変更(臓器別),Digestive Surgeryを公式英文誌化. |
2002年 | データ添付投稿の受け付けを開始(FD,MO,CD). |
2004年 | 学会独自のオンライン・ジャーナルサイトを公開. |
2006年 | 事務所移転(茅場町),理事長制導入. |
2007年 | 担当理事 安藤 暢敏,第六代委員長 桑野 博行,文献検索期間の明示を義務化,平成19年度電子アーカイブ対象誌に選定(Journal@rchive),会誌編集委員会からの公示を掲載開始. |
2010年 | 事務所移転(新富),オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化. |
2011年 | J-STAGEへ移行,会誌完全電子化,メールマガジン配信開始,CrossRef利用開始(DOI付加),委員会の体制を強化(統計学の委員,English language editor). |
2012年 | 担当理事 渡邊 昌彦,Top publications in Japanese和文ジャーナル上位100誌にて8位(Google Scholar Metricsより),J-STAGE 3公開,全文HTML公開,論文種目「特別報告」を追加,「日本消化器外科学会雑誌 英文作成上の注意(監修:東京医科大学国際医学情報学講座)」「日本消化器外科学会雑誌 用字用語について(公用文作成の要領などを基に作成)」を公開,投稿時の動画資料への対応を開始. |
2013年 | 第七代委員長 遠藤 格,委員を増員,学術情報XML推進協議会に加盟,DOIの付番ルール変更(早期公開機能への対応),和文の索引用語を追加,動画資料を含む記事を掲載,特別報告(NCD Annual report)・特別寄稿(英語による教育コンテンツ)を掲載,抄録・引用文献データベース「Scopus」の収載状態を整理. |
2014年 | NLMのElectronic linkを修正,Web会議システムを導入,J-STAGEの改善によりGoogle Scholarとの連携を強化. |
2015年 | 特別報告(医療安全委員会)を掲載,J-STAGE利用者アンケートに協力,投稿規程を改正(著者数制限の変更,貢献度の申告,連絡責任者及び保証者の明示,用字用語についての変更(日本医学会医学用語辞典に準拠),図表枚数制限の緩和,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止))の導入. |
2016年 | 投稿規程を改正(ギフトオーサーの追加の抑止,倫理審査番号の原則明示,英文要旨と英文の索引用語情報は採用後の提示に,チェックリスト・原稿テンプレートを開示),メールマガジンへの会告・広告掲載開始,メールマガジンのデザインを更改(モバイルファースト) |
2017年 | 事務所移転(三田),J-STAGEにてGraphical Abstractを表示開始,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC(表示-非営利))へ変更,J-STAGE刷新. |
2018年 | 学会創立50周年,J-STAGE利用者アンケートに協力,J-STAGEの論文閲覧性向上によるアクセス数の大幅増加を記録. |
2019年 | 担当理事 遠藤 格,第八代委員長 比企 直樹,優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムを刷新,J-STAGE編集委員会名簿を公開. |
2020年 | 特別報告「オペレコを極める」通年掲載 |
2021年 | 特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討,執筆依頼開始 |
2022年 | 特別報告「私の工夫」掲載 |
本誌の歴史を作られてきた先輩諸兄に心から感謝の意を表したいと思います.
研究倫理問題に関しては毎年掲載しておりますが,注意喚起という目的で再掲させていただきます.まずJDDWの倫理指針が改訂されました.人を対象とする臨床研究では,自施設のIRB(Institutional Review Board)を通過し,前向き臨床試験では公的機関(UMIN臨床試験登録システム,日本医師会治験促進センター「臨床試験登録システム」,日本医薬情報センターなど)に登録することが求められます.侵襲(軽微な侵襲を除く)・介入を伴う研究について,研究責任者に対し,モニタリングや第三者的な立場の者による監査の実施が新たに義務付けされます.9例以下をまとめた研究性のない症例報告は倫理審査が不要なようです.10例以上をまとめた症例報告は症例集積研究とみなされ,倫理審査委員会の審査が必要です.最近問題となることの多い多重投稿については,Similarity Checkを導入しております.
他論文と40%以上の重複があった場合は委員会で検討し,剽窃や二重投稿の可能性がないかを慎重に審議します.これらから剽窃が疑われた場合はCOPEのガイドラインに則り,1)著者および指導者に厳重注意を書面で促し,2)著者をブラックリストとしてリストアップし,3)剽窃が疑われた論文の投稿があった事実を本誌の読者に周知することで,今後の悪意のある投稿の予防に努めています.
2022年にはこの方針で査読を行っていくとSimilarity Check 40%以上の論文が何本か指摘されました.しかし,これらを精査すると,悪意のあるCopy and Pasteではないことが判明しました.この場合,著者と指導者あてに,Similarity Checkにて指摘された部分と,これらが剽窃とならないために,自分の表現で書き直して欲しい旨,書面での指導を行いました.悪意があるかどうかの判断は担当査読者と編集委員長により行い,これを編集委員会で丁寧に議論しております.
以下,2023年の所信表明を述べさせていただきたいと思います.
昨年掲げた「より教育的な査読」を著者に提供するという目標は編集委員による素晴らしい,粘り強い査読により達成できていると自負しております.委員の先生方には,どれだけ時間をかけて査読に当たって下さっているかと思うと,頭が下がります.
一方で2022年度は,投稿数が減少しました.採択率,つまり難易度は不変でありますが,COVID-19の影響なのか投稿数は減っており,なんらかの対策が必要と考えました.一番の疑問は,「懇切丁寧で教育的な査読,完成するまで徹底的に編集委員が著者らに付き合う姿勢が消化器外科学会の会員全員に伝わっているか?」であります.これほど丁寧に校正のような査読作業をして下さっている査読者(編集委員)の先生方の努力や想いが投稿者や会員に十分に伝わっていないのではないかと考えました.そこで,2023年には新しい企画として,編集委員による査読への想いを語っていただこうと思います.「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」という内容で全編集委員に執筆いただき,編集委員の顔写真付きで毎号掲載してゆきたいと思っております.これによって,「消化器外科学会雑誌に投稿すると,素晴らしい論文の書き方を学べ,生涯想い出に残る論文が執筆出来ます」というメッセージを会員に伝えることができるのではないかと画策しております.これらの努力が,本誌の基本編集方針である「和文誌の最高峰を維持する」と「若手消化器外科医の登竜門」を守り続けつつ投稿数を増加することとなると信じます.
以上,2023年の日本消化器外科学会会誌編集委員会の基本姿勢,改革案などについて記しました.本誌の歴史と伝統を重んじつつ,新たなる雑誌への改革も考えつつ,「和文誌の最高峰」として,いつまでも輝く雑誌であるように委員一同精励してまいります.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 比企直樹)
(2023年1月)