2023 年 56 巻 5 号 p. 299-305
目的:膵頭部腫瘍による胆管・胃十二指腸狭窄に対して,緩和的に外科的バイパス術が行われることがある.今回,腹腔鏡下胆囊空腸バイパス術と胃空腸バイパス術の同時施行(以下,ダブルバイパス術と略記)症例において,その安全性と有効性を検討した.方法:2014年4月から2021年3月までに腹腔鏡下ダブルバイパス術を施行した10症例を対象とし,術後短期および長期成績を後方視的に検討した.結果:年齢中央値は73歳で,原疾患は膵頭部癌が8例と最多であり,閉塞性黄疸を3例,胃排出路閉塞を7例に認めた.閉塞性黄疸と胃排出路閉塞は全例で改善を認め,1例にClavien-Dindo grade IVの術後合併症を認めた.術後生存期間の中央値は6.4か月,胆管・胃十二指腸の再狭窄に対しての術後追加治療施行例はなかった.結語:腹腔鏡下ダブルバイパス術は安全に施行可能であり,緩和的治療の選択肢となりうる.