2025 年 58 巻 10 号 p. 555-564
消化管手術後の縫合不全に対して,欧米ではフルカバードステント挿入による瘻孔閉鎖が多く報告されているが,本邦では保険収載がなく報告は少ない.今回食道胃接合部癌術後の縫合不全に対して,内視鏡的にフルカバードステントを留置して良好な経過を得られた症例を経験した.症例は49歳の男性で,食道胃接合部癌に対してロボット支援下部食道噴門側胃切除術を施行した.術後2日目に縫合不全を認め,術後9日目に胸腔鏡・腹腔鏡下洗浄ドレナージ,穿孔部の縫合閉鎖・大網被覆を行ったが再度縫合不全を認めた.炎症のコントロール不良であり術後27日目に内視鏡下にHanaroSTENT 18 mm×80 mmを挿入した.その後速やかに臨床症状の改善が得られ,瘻孔の縮小を確認してステントを抜去し,術後95日目に退院した.難治性縫合不全に対してフルカバードステント留置は保険適用外ではあるが,低侵襲で有用な治療選択肢である可能性が示唆された.