The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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CASE REPORT
Duodenal Diverticulum with a Calculus That Perforated after Curative Surgery for Remnant Gastric Cancer
Makoto HoriuchiNozomi KoyamadaHiroki YamanaKozue TakahashiFumie MetokiKai TakayaKazushige MurakamiKenji KainoToru Yoshida
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2025 Volume 58 Issue 8 Pages 441-450

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Abstract

症例は73歳の男性で,30代の時に胃癌に対する幽門側胃切除術,Billroth II法再建の既往があった.かかりつけ医で貧血の指摘があり,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,残胃の不整粘膜を認め,生検で高分化腺癌の診断となった.残胃癌の診断で当院紹介となり残胃全摘術を施行したが,術後のレントゲンで十二指腸憩室の存在が明らかとなった.術後3日目に腹腔内ドレーンの排液が腸液様となり,消化管穿孔の診断で再手術を行ったところ,結石を内包して穿孔した十二指腸憩室を認めた.穿孔部は単純閉鎖し,十二指腸内腔の減圧処置を追加して手術を終了した.術後敗血症を呈したため長期入院加療を要したが,初回手術から95日後に無事自宅退院となった.残胃癌の術前精査では十二指腸憩室の診断が難しいことも多いが,残胃癌の根治術が誘発した憩室穿孔と考えられ,教訓的症例として報告する.

Translated Abstract

Diagnosis of duodenal diverticulum is challenging during preoperative surveillance for remnant gastric cancer. Here, we present a patient with a duodenal diverticulum with a calculus that perforated soon after curative surgery for remnant gastric cancer. The patient was a 73-year-old male who underwent distal gastrectomy with Billroth II reconstruction for gastric cancer at the age of 34. He was diagnosed with anemia in a family medicine clinic and underwent esophagogastroduodenoscopy. An irregular mucosa was observed in the remnant stomach. Biopsy evaluation led to diagnosis of well-differentiated adenocarcinoma of the remnant stomach. The patient was referred to our hospital and underwent completion gastrectomy. Postoperative X-ray revealed the presence of a duodenal diverticulum for the first time. On postoperative day 3, intestinal juice was noted in the drain, suggesting gastrointestinal perforation, and reoperation was conducted. A perforated duodenal diverticulum containing a calculus was identified intraoperatively. The perforation site was repaired with simple closure and the duodenal lumen was decompressed. After the second surgery, he developed sepsis and required long-term hospitalization. He was safely discharged home 95 days after the first surgery.

 はじめに

十二指腸憩室は無症状で経過し治療を要さないことも多いが,結石などを内包することで穿孔のリスクが上がり,重篤な病態に進行する場合がある1).また,胃切除後の残胃癌に対する術前精査は内視鏡的に十二指腸を評価できないこともあり,十二指腸憩室の存在を把握しにくい状況にある.今回,我々は残胃癌に対する根治術を行ったことで,術前に明らかとなっていなかった十二指腸憩室の穿孔を誘発したと考えられた1例を経験したので,文献的考察とともに報告する.

 症例

患者:73歳,男性

主訴:特になし.

既往歴:虫垂炎に対して手術(18歳),胃癌に対して幽門側胃切除術Billroth II法再建(34歳)

内服歴:オメプラゾール,レバミピド,クエン酸第一鉄ナトリウム

生活歴:喫煙 30本×35年 飲酒 ビール1,000 ml/日

家族歴:弟 肺癌

現病歴:特に症状は認めていなかったが,かかりつけ医で貧血の指摘があった.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,残胃の吻合部小彎側に不整な粘膜隆起を認めた.生検で高分化腺癌の診断となり,精査加療目的に当院紹介となった.

来院時現症:身長158 cm,体重66.6 kg,BMI 26.7

血液生化学検査所見:WBC 3,230/μl,Hb 9.1 g/dl,Plt 150,000/μl,T-Bil 0.45 mg/dl,AST 27 U/l,ALT 23 U/l,AMY 72 U/l,Cre 0.74 mg/dlと軽度の貧血を認めた.腫瘍マーカーはCEA 2.3 ng/ml,CA19-9 8.4 U/mlと正常範囲であった.

上部消化管内視鏡検査所見:胃癌に対する幽門側胃切除術,Billroth II法再建後の所見であった.胃空腸吻合部の小彎側中心に易出血性の不整な粘膜隆起を認めた(Fig. 1).粘膜隆起の境界は不明瞭で潰瘍底は認めず,吻合部空腸への浸潤は認めなかった.生検で高分化腺癌の診断であった.

Fig. 1  Esophagogastroduodenoscopy. A hemorrhagic irregular upheaval lesion was visible at the anastomosis of the lesser curvature.

透視検査所見:胃空腸吻合部の小彎側に壁不整像を認めた(Fig. 2).

Fig. 2  An upper gastrointestinal series revealed an irregular-shaped tumor at the anastomosis of the lesser curvature. Contrast media retention showed a duodenal diverticulum.

胸腹部造影C T所見:残胃の吻合部小彎側に壁肥厚像を認め,膵実質との境界は不明瞭であった(Fig. 3a).腫大リンパ節や明らかな遠隔転移像は認めなかった.

Fig. 3  a) Contrast-enhanced CT revealed a gastric tumor detectable as wall thickening with a sign of pancreas infiltration. b) Duodenal diverticulum calculus.

以上から,残胃癌M-40-A Type 5 cT4aN0M0 cStage IIBの診断で,根治手術として残胃全摘術と胆囊摘出術を行う方針とした.

手術所見①:正中創の他,肝下面への癒着は高度であり,開腹時に残胃は視認できなかった.癒着切離を進め,上腹部臓器の全容をある程度確認できた後に胃空腸吻合部周囲の処理を行った.Billroth II法,結腸後経路再建後の所見で,Braun吻合は認めなかった.空腸の切離は2か所とも自動縫合機で行い第一空腸枝周囲を郭清し,横行結腸間膜との間を剥離して摘出臓器を横行結腸間膜の頭側に引き抜いた.膵実質と肝臓の一部が腫瘍部位と瘢痕性に癒着しており浸潤が否定できない所見であったが,双方ともに付着面積が1 cm2程度と小さかったため,それぞれの実質を一部削る形で合併切除とした(Fig. 4a).臓器摘出後に輸入脚の小腸を確認すると,黒色の内容物で緊満しTreitzから小腸が立ち上がっていたため,断端部を穿通させて内容物を吸引した.胆汁と膵液が貯留したものと考えられた.再建はRoux-en Y法で行い,もともとの横行結腸間膜欠損部を利用した結腸後経路とした.食道空腸吻合は自動吻合機で,Y脚は手縫いの層々吻合とした(Fig. 4b).手術時間は5時間58分,出血量は490 gであった.

Fig. 4  Operative findings. a) Completion gastrectomy procedure. The numbers indicate the order of separation. b) Schematic diagram showing the reconstruction. The afferent loop is expanded.

病理組織学的検査所見:組織学的に中分化型管状腺癌(tub2)が増殖浸潤し,隣接する回腸に浸潤する像を認める.M-40-A Type 3 tub2 pT4b INFb Ly0 V0 pN0 pM0 CY0 pStage IIIA(胃癌取扱い規約第15版)

術後経過①:術直後の腹部レントゲン検査で円形の高吸収像を認め,この時点ではじめて十二指腸憩室の存在を認識した(Fig. 5).術後1日目の血清アミラーゼ値は427 U/l,ドレーンアミラーゼ値は15,420 U/lであり,術後3日目の血清アミラーゼ値は133 U/l,ドレーンアミラーゼ値は866 U/lであったため,術後は膵液瘻を認めていた.また,術後2日目の血液検査でCRP 34 mg/dlと高度の炎症反応を認めており,膵液瘻の他にも炎症性合併症が懸念される所見であった.同日,縫合不全を懸念して消化管透視検査を行うも,特記すべき所見は認めなかった.この時点で右陰囊の病的な腫大と発赤を認めていたが.全身の炎症反応改善により自然軽快すると考え,経過観察としていた.

Fig. 5  X-ray examination following the first surgery. Contrast media retention indicated a duodenal diverticulum.

術後3日目にウィンスロー孔に留置していた腹腔内ドレーンの性状が腸液様に変化した.血液検査ではCRP 38 mg/dlと高度の炎症反応を認め,CTでは術後2日目に施行した消化管透視検査の造影剤が後腹膜に広がる所見と微細なfree airを認めた(Fig. 6).消化管穿孔と判断し,緊急手術の方針とした.

Fig. 6  CT images 3 days after the first surgery. a) Axial plain. Contrast media spread to the retroperitoneum and free air was detected. b) Coronal plain. A duodenal diverticulum calculus was detected (black arrow). Another lesion had contrast media retention, also indicating a duodenal diverticulum (white arrow). Effusion of the retroperitoneum (black and white arrow).

手術所見②:腹腔内は腸液で汚染されており,汎発性腹膜炎の所見であった.Kocher授動を行うと,十二指腸後壁に憩室を認め3 cm程の黒色腸石を内包しており,その憩室が穿孔していた(Fig. 7a~c).この憩室は術直後の造影剤貯留像で判明した憩室とは別のものであった.壊死した組織はトリミングした後に,憩室頸部を閉鎖するように全層連続縫合で閉鎖し,さらに十二指腸壁に大きく糸針をかけて穿孔部を埋没した(Fig. 7d).腹腔内に複数のドレーンを留置し,経鼻胃管はY脚を経由して十二指腸まで伸ばすことで十二指腸の減圧とした(Fig. 8).手術時間は3時間25分,出血量は35 gであった.

Fig. 7  Findings during the second operation. a) Schematic diagram showing the duodenum. The perforated diverticulum is located at the duodenal posterior wall. b) Duodenal diverticulum calculus. c) Photograph after a Kocher maneuver. The perforated duodenal diverticulum contained a calculus (black arrow). Another diverticulum containing contrast media was observed (white arrow). d) Schematic diagram after the Kocher maneuver.
Fig. 8  Schematic diagram showing the drainage strategy for the duodenal perforation.

術後経過②:再手術後は抜管せずにICUに帰室した.重症敗血症に至ったため,人工呼吸器管理を要した.全身状態が徐々に改善し抜管された後の再手術後7日目,透視検査とCTを施行したところ,十二指腸周囲には縫合不全を示唆する所見を認めていなかったが,食道空腸吻合部の縫合不全を認めた.食道吻合部周囲のドレナージを継続し,経鼻胃管は食道空腸吻合部の減圧を効かせるように誘導した.再手術後8日目,腹腔内のドレーンから出血を認め,CTでは主要血管の破綻は明らかではなかったが,肝下面周囲にextravasationを認めた.Plt 150,000/μl,PT 57.8%,APTT 35.0 sec,FDP 48.8,Dダイマー46.2と,播種性血管内凝固症候群のような血液学的な出血傾向を来していたわけではなかったが,血栓予防としてダルテパリンナトリウム5,000 IU/dayを持続投与している状況下ではあった.主要血管と出血点の連続性は判然としなかったが,血圧低下も認めたことから,静脈性の腹腔内出血も念頭に血管内治療ではなく緊急手術の方針とした.

手術所見③:開腹すると腹腔内の癒着は高度であり,かつ長期の炎症暴露により組織自体がかなり脆くなっていた.腹腔内には血腫を認め,血腫除去を行うも明らかな出血点は認めなかった.経腸栄養経路の確保を目的として腸瘻を造設し,手術を終了した.手術時間は2時間40分,出血量は375 gであった.

術後経過③:出血による血液喪失に対して手術前後で赤血球液を5単位,新鮮凍結血漿を5単位投与し,人工呼吸器管理,敗血症に対する保存加療を引き続き行った.その後は,適宜輸血製剤を使用しながらの長期的な治療となったが,全身状態は改善し,初回手術から95日後に自宅退院の運びとなった.

現在は術後1年6か月であるが,再発所見なく経過している.

 考察

十二指腸憩室の頻度は消化管の中で結腸に次いで多く,消化管造影検査では5~10%2),剖検例で22%3)にみられたと報告されており,比較的頻度の高い疾患と認識されている.しかしながら,十二指腸憩室の大部分は無症状で経過するためにほとんどの症例で治療を要さず,治療対象となるのは1~2%といわれている1)

治療を要する病態としては,憩室炎,出血,穿孔などの二次的な病態が合併する場合で,憩室内に結石が形成される場合は上記病態の合併リスクが上がると考えられており4),本症例でも結石を内包していた憩室のみが穿孔している.また,特にVater乳頭近傍に憩室を認める場合は,憩室からの圧排や炎症の波及により胆汁や膵液の流出障害を来し,Lemmel症候群を呈する5)

十二指腸憩室内結石の頻度は不明であるが,報告例は少なく比較的まれな疾患である.それゆえ,その治療法については一定のコンセンサスは得られていない.

医学中央雑誌で「十二指腸憩室」,「結石」をキーワードとして1903年から2023年まで検索したところ,本邦において十二指腸憩室内結石が原因で治療を行った症例は39例であり,本症例を合わせると40例であった(Table 1).

Table 1 Reports of duodenal diverticulum calculus in Japan (n=40 cases)

n %
Age 70.3±12/8
Sex Male : Female 7 : 33 17.5 : 82.5
Past history of gastrectomy + 11 27.5
Billroth II 6 15
Roux-en Y 5 12.5
Chief complaint stomachache 30 75
vomit 11 27.5
fever 4 10
Preoperative diagnosis Diverticular perforation 19 47.5
Bowel obstruction 11 27.5
diferticulitis 4 10
Lemmel syndrom 3 7.5
Location of diverticulum 1st : 2nd : 3rd : 4th (portion) 1 : 27 : 8 : 0 2.5 : 67.5 : 20 : 0

平均年齢は70歳で,男女比は7:33であり圧倒的に女性に多かった.憩室の部位としては傍乳頭部を含む下行脚が40例中27例で最も多く,好発部位であると同時にLemmel症候群など症状を来しやすいことも原因として考えられる.発症時診断は,40例中19例が十二指腸憩室穿孔あるいは穿通で,11例が結石による腸閉塞や輸入脚症候群,その他憩室炎やLemmel症候群などであった.それゆえ,症状としては腹痛や嘔吐を主訴に発症している.興味深いことに11例に胃切除術の既往があり4)6)~14),再建方法はBillroth II法もしくはRoux-Y法のいずれかであった.過去の報告でも胃切除術の既往との関連性が報告されており4),憩室内での腸内容のうっ滞に加え,十二指腸が盲端となることによる十二指腸内自体のうっ滞が併存することで,腸液が沈殿・貯留して結石が形成されやすいと考察されている13)

残胃癌とは,初回手術時の病変,切除範囲,再建法などを問わず,再発癌の可能性がある症例を含めて,胃切除(胃の一部以上を全層切除した)後の残胃に発生したと考えられる胃癌をいう15).統計的にはBillroth II法による再建後の残胃,特に吻合部に発生しやすいとされており,十二指腸液の逆流などが癌発生に起因していると考えられている16).また,Billroth II法とRoux-Y法再建後の残胃癌においては,空腸間膜側へのリンパ節転移が以前より指摘されており,空腸間膜側の十分なリンパ節郭清が推奨されている17).残胃癌の長期予後や術後経過としては通常の噴門側胃癌のそれと比較して大きな差はないとされているが,必然的に再手術である点,リンパ流の変化から小腸間膜の郭清を要する点などから,手術自体は通常の胃癌と比べて高難度となる場合が多い18)

医学中央雑誌(1903年〜2023年)およびPubMed(1950年〜2023年)で「残胃癌」,「十二指腸憩室」あるいは「remnant gastric cancer」,「duodenal diverticulum」をキーワードに検索したところ(会議録除く),残胃癌と十二指腸憩室の合併症例は検索しえたかぎり1例のみであった.須藤ら8)が報告した症例は,残胃全摘術の際にkocher授動を行ったところ十二指腸下行脚に偶発的に憩室と結石を認めたため,憩室切除術を同時に行ったというものである.十二指腸憩室自体は比較的高頻度で,かつ胃切除術後に憩室結石が形成されやすくなることを鑑みると,残胃癌治療時に十二指腸憩室結石症を潜在的に合併していた症例がこれまでにも存在していた可能性が高い.ただし,十二指腸が盲端となる再建術の後は内視鏡的に十二指腸を評価することが難しく,その他のモダリティーでも十二指腸憩室や結石を正確に評価しきれない場合も多く,これまでの症例も十二指腸憩室結石症の診断に至っていなかった可能性がある.本症例でも,後方視的に確認すると術前のCTで十二指腸憩室結石が確認できるが(Fig. 3b, 6b),術前診断には至らなかった.

残胃癌に対する手術は残胃全摘と空腸間膜を含むリンパ節郭清が一般的であるが,上腹部の癒着による操作の困難性を考え,尾側の切除操作を優先して行うことが肝要と考えられる.具体的には挙上空腸のリンパ節郭清と切離を先行し,その後に横行結腸より頭側の切離を進めることで,十分な視野展開が可能になる.ただし,上記の手順で手術を進めると,手術の過程で十二指腸から輸入脚にかけての短い腸管が完全閉鎖空間となる場合があり,その状態が長時間となる懸念がある.膵液は1,500 ml/day,胆汁は600 ml/day分泌されることが知られており19),1時間あたり合計で100 mlほどとなるため,上記の状況が続くと膵液や胆汁の分泌により十二指腸から輸入脚までが拡張し,内圧上昇を来す恐れがある.本症例では術前に十二指腸憩室結石症の診断には至っておらず,残胃癌に対する手術を挙上空腸の処理を先行して行ったためか,切離した輸入脚に黒色内容物の緊満を認めた.これらがまさに膵液,胆汁と黒色腸石が溶解した液体と考えられ,十二指腸の内圧が上がったことが推測される.

本症例の憩室穿孔の原因を考察すると,術中の直接的な憩室壁の損傷,術後の空腸の内圧上昇,膵液瘻の影響など,さまざまな因子の関与が想定されるが,術中の十二指腸内圧の上昇が主因であると我々は考えている.本症例は術後2日目に高度の炎症反応と右陰囊の臨床的炎症所見,術後3日目のCTでは右後腹膜の液体貯留を認め(Fig. 6),その液体貯留は十二指腸周囲から右陰囊に連続していた.このような事実からは,術後2日目の時点ですでに憩室が後腹膜に穿通して右陰囊まで炎症が広がっていたことが考えられる.憩室穿通に関与した原因としては,術中から術直後に影響を与えた因子でかつ十二指腸の後腹膜側に影響を与えるものと考えたため,上記の結論に至った.ただし,十二指腸の圧が亢進していたという明確な証拠はなく,術中所見としての輸入脚の緊満感が唯一の根拠であるため,穿通理由が圧の上昇であることは考察の域から出ないことを追記する.

Billroth II法もしくはRoux-Y法再建術後の残胃癌治療に際しては,十二指腸の評価が困難であることを念頭に十二指腸憩室結石などの有無をCTなどでよく確認すること,手術の際には消化液の分泌を念頭に輸入脚のドレナージを行うことが肝要であると考えられた.本症例においては,残胃癌手術の輸入脚切離時に切離断端より細径のドレーンを挿入して十二指腸の減圧を図ることで,十二指腸憩室穿孔を予防できた可能性がある.

利益相反:なし

 文献
 

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