2026 年 59 巻 8 号 p. 470-477
症例は51歳の女性で,持続する左側腹部痛を主訴に当科を受診した.画像検査では,原因不明の脾静脈狭窄および冠状断で最大21 cmの脾腫を認め,臨床所見から脾臓摘出術の適応と判断したが,術前評価において側副血行路の発達による術中出血リスクおよび術野のworking space確保が困難と判断し,脾臓摘出術に先行して脾動脈塞栓術を施行した.塞栓術翌日の腹部造影CTで脾臓の阻血と体積の縮小を確認し,腹腔鏡下脾臓摘出術を実施した.近年,巨大脾腫に対する腹腔鏡下脾臓摘出術が多く報告されているものの,術中出血のコントロールや手術操作の困難性が課題とされている.本症例では,術前に脾動脈塞栓術を施行し動脈流入血を減少させることで術中出血リスクの軽減,および脾臓の縮小,腹腔鏡下手術の安全性を高めることが可能であった.本症例の経験から,巨大脾腫に対する脾臓摘出術の術前戦略として脾動脈塞栓術の有用性を示唆するものであり報告する.