21 巻 (1988) 3 号 p. 779-788
上部消化管癌症例に対する合理的な手術適応の決定および適正な術式の選択を目的として, リスクファクターの同定, 術式別の手術侵襲反応の特徴, および水分電解質代謝を中心とした術後管理の重要性について検討を加えた. まず, 多変量解析によるリスクファクターの同定では年齢, 栄養状態, 臓器機能異常, 癌の進行度の4つの大別可能であった. 術式別の手術侵襲反応の特徴についての検討では, それぞれの手術侵襲反応には顕著な差異な認められず, むしろ手術操作自体にともなう直接的な心肺機能への影響に差異がみられ, 水分電解質管理の重要性が示唆された. しかしながら, 一連の手術侵襲反応の多寡は, 麻酔方法や術式の工夫, さらにはナトリウム投与量の制限とドライサイドの輸液管理などにより, その反応の程度もかなり抑制可能であり, たとえ拡大手術といえどもより安全な手術となしえるものと考えられた.