24 巻 (1991) 4 号 p. 1117-1120
癌のリンパ節転移の過程には, 癌細胞間の解離接着が重要な役割を担っている.この細胞間接着因子の1つであるE型カドヘリンの発現性から食道癌のリンパ節転移について検討した.対象は食道癌切除例35例で, 抗ヒトE型カドヘリンモノクローナル抗体 (HECD-1) を使用し, 免疫組織染色を行った.癌巣での染色パターンをpositive (全体がほぼ均一に染色される), negative (染色されない) mixed (両者が混在) の3者に, 染色強度を強いもの (A群), 弱いもの (B群) に分類した.深達がsm層までの7例中ではpositiveが3例, negativeが1例みられたが, pm以上では全例mixedを示し, リンパ節転移症例もすべてmixedであった.一方, リンパ管内 (ly) の癌巣はpositiveが大多数を占め, A群に転移リンパ節の個数が多かった.以上から, 癌巣がmixedで解離しやすい状態から, リンパ管内では接着性を十分保った腫瘍塊を形成し, 遠隔リンパ節に転移着床することが示唆された.