25 巻 (1992) 3 号 p. 886-890
症例は50歳女性.主訴は右側腹部痛, 発熱.腹部超音波検査, 腹部computed tomography検査, 腹部血管造影検査などの画像所見では, 肝内胆管の拡張と肝内結石を認めるのみで, 悪性腫瘍の所見はなかった.経皮経胆管造影検査時に採取した, 胆汁中のcarcinoembryonic antigen (以下CEA) が8,490ng/mlと高値を呈したことから, 先天性胆道拡張症に悪性腫瘍の併存を疑い, 肝左葉切除術を施行した.術後の組織学的な検索において, 慢性炎症により肥厚した胆管壁の一部に肝内胆管癌の併存を確認した.嚢胞液中, 胆汁中のCEAについて本邦報告例を検討したところ, 良性疾患の中で8, 490g/mlという高値を呈した症例の報告はなかった.以上, 本症例は肝内に限局した先天性胆道拡張症 (戸谷V型) に併存した肝内胆管癌というまれな症例であるとともに, 胆汁中のCEAの異常高値は, 悪性診断の指標の1つになる可能性が示唆された.