日本消化器外科学会雑誌
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大腸全摘術後の1症例における腸内細菌叢の変化
岩垣 博巳日伝 晶夫木村 臣一野中 泰幸淵本 定儀折田 薫三
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1992 年 25 巻 7 号 p. 2032-2035

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抄録
家族性大腸ポリポーシスにて全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術, 回腸瘻造設術が施行された20歳, 男性を対象とし, 術後1, 3, 4, 10, 12か月の計5回糞便を採取し, 糞便試料について, 固形分, pH, 有機酸, 腸内細菌叢の測定を行った. 回腸瘻は初回術後8か月めに閉鎖した.糞便水分, pHは術後経過とともに低下, 回腸瘻閉鎖後は健常人近似の値となった. 術後1, 3, 4か月における糞便有機酸濃度は低く, bifidobacteriumは検出されなかったが, 回腸瘻閉鎖後, 糞便有機酸濃度は上昇し, 健常人特有のパターンに移行し, 術後10, 12か月におけるbifidobacteriumの占有率はそれぞれ, 23.9%, 49.3%と検出された. また, 術後1, 12か月の糞便の嫌気性菌/好気性菌検出比は, 3.0, 37.0であり, 術後経過とともに腸内細菌数の増加と, bi藪dobacteriumを始めとする嫌気性菌占有率の増加がみられ, 小腸の大腸機能代償を裏づけた.
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