症例は67歳の女性. 1979年に咽頭痛を主訴として来院し, 下咽頭癌 (高分化型扁平上皮癌) の診断のもとに放射線治療を施行し完全寛解を得た. 約2年後の1981年2月, タール便を主訴として来院し, 胃内視鏡にて早期胃癌と診断され, 幽門側胃亜全摘術を施行した. さらに約4年後に, 左乳腺腫瘤を主訴として来院し, 左乳癌と診断され, 左乳房切除術を施行した. 最後に約6年後の1991年10月に嚥下困難を主訴として来院し, 上部消化管造影, 内視鏡にて食道癌 (低分化型扁平上皮癌) と診断され, 放射線治療を施行し完全寛解を得た. 本症例は第1癌の発病後, 第4癌の発症まで12年間にわたり経過を観察され, かつ生存しているまれな異時性4重複癌の症例であった. また, 免疫学的機能検査で細胞性免疫能低下を認め, 宿主生体防御能低下と発癌の関連性に興味が持たれた症例であった.