抄録
1992年9月までの11年間に川崎医科大学救命救急センターにおいて手術治療したバリウム腹膜炎症例は4例であった.男性1例・女性3例, 年齢は52歳から87歳まで, 平均68歳であった.病変は胃・十二指腸潰瘍3例, 直腸癌1例, 検査は上部消化管造影3例, 注腸造影1例, 穿孔部位は胃・十二指腸2例, 結腸・直腸2例であった.治療として穿孔後短時間での徹底的な洗浄, バリウム除去とともに胃潰瘍穿孔の1例では胃切除を, 十二指腸潰瘍の1例では大網包埋挿管法を施行した.結腸穿孔の2例には人工肛門造設術を施行した.予後は全例が生存であった.
1例に結腸再吻合術を試みたが, 2度にわたり狭窄をきたし, 結局人工肛門が必要であった.病理組織所見では微細なバリウム粒子が肉芽腫様の反応をきたし狭窄をおこしたと思われた, したがって結腸穿孔によるバリウム腹膜炎後における結腸端々吻合については慎重な対応が必要と思われた.