29 巻 (1996) 10 号 p. 1944-1952
Angiotensin II (以下, AT II) を用いた昇圧化学療法 (induced hypertension chemotherapy, 以下IHC) の意義を検討する目的で, ラットの肝被膜下に腹水肝癌AH 100Bを移植して, 以下の実験を行った. AT IIの投与により, 平均動脈血圧は約55%上昇し, 水素ガスクリアランス法による組織血流量測定では, 腫瘍組織血流量は56.2±16.4ml/ min/ 100gから88.7±35.3ml/ min/ 100gへと有意に増加した (p<0.05). また同時に経静脈的に投与されたAdriamycin (以下, ADM) の腫瘍組織内濃度は, IHC群ではADM単独投与群の約4倍の高値を示した. 化学療法施行後9日目の剖検所見では, IHC群 (n=6) の1例で腫瘍径の増大が抑制され, また腫瘍重量は, IHC群1.317±1.007gであり, 無処置群3.027±0.362gに対し, 有意に腫瘍増殖の抑制効果が認められた (p<0.05). 以上より, 昇圧化学療法は, 肝転移巣に対しても選択的に高濃度の抗癌剤を集積させ, 有効な化学療法となりうる可能性が示唆された.