患者は68歳の男性で, 直腸癌の術前, 肝性脳症をきたし, 当科へ緊急入院した. 血中アンモニアは191μg/mlと異常高値を示し, 上腸間膜動脈および腹腔動脈造影静脈相にて上腸間膜静脈より下大静脈に流入する巨大短絡路を認め, 上腸間膜静脈および脾静脈の血流はすべて短絡路を介し下大静脈へ流入し, 門脈は遠肝性の血流を認めた. バルーンによる短絡路閉鎖試験では閉鎖後上腸間膜静脈の血流は門脈を介し肝へ流入し, 門脈圧は17mmHgより20mmHgに増加した. 猪瀬型肝性脳症を合併した直腸癌の診断で, 短絡路を結紮したのち, 腹会陰式直腸切断術を施行. 術後血中アンモニアは低下し脳症は軽快した. 門脈圧は18mmHgより24mmHgへ上昇した (増加率33%) が, 術後1年目の現在, 食道胃静脈瘤の発生は認めず, 肝機能は著明に改善した. 短絡路閉鎖術により脳症の改善とともに肝機能改善の可能性もあり, 積極的に施行すべき有意義な治療法と考えられた.