31 巻 (1998) 9 号 p. 1986-1990
症例は51歳の男性.Imの3型食道癌で, 放射線・化学療法施行中に腫瘍出血による吐血を生じ, 出血性ショックを起こした.胸部CT検査にて大動脈壁に接する深い潰瘍形成を認めたため, 今後大動脈食道瘻を合併して急死する危険性が高いと判断した.そこで, 大動脈壁に瘻孔を生じてもステントの被膜により出血を防止出来るよう, 下行大動脈内に被覆ステントを留置した.留置後111日目に肺炎にて死亡したが, それまで一度も吐血などの症状は認めなかった.剖検にて, 大動脈壁に瘻孔は生じていなかったが, 大動脈内に留置したステントの被膜と大動脈壁との間にはフィブリン血栓によってわずかな間隙もなく両者が密着し, 固定されているのが確認された.下行大動脈内へのステント留置は大動脈食道瘻の合併予防として有用である可能性が示された.