症例は68歳の男性. 進行直腸癌に対する低位前方切除術の5か月後に, 経過観察のため行った腹部超音波検査で肝外側区に腫瘍が発見された. Computed tomography(以下CT), 血管造影検査を行い, 門脈左枝に腫瘍栓を伴った直腸癌の肝転移と診断した. 肝左葉切除を施行した. 切除標本では, 肝外側区域および内側区域の肝実質に多発性腫瘤があり, 門脈外側前後枝を充満し先端が門脈左枝まで達する腫瘍栓を認めた. 組織学的に直腸癌からの転移性病変であることが確認された. 患者は肝切除2年2か月後残肝再発を認め, 治療するも3年10か月後癌死した. 転移性肝癌における門脈内腫瘍栓の頻度は約10%と低率で, 本症例のように1次分枝まで進展する症例はまれである. しかし, 腫瘍栓の存在は外科治療上重要であり, 正確な術前診断が必要である.