2001 年 34 巻 1 号 p. 27-31
われわれは28年前に食道あからしあに対し胃弁移植術を施行し, 術後2次的に発生したと考えられるBarrett上皮由来の2型噴門部食道腺癌を経験した. 症例は55歳の男性で嚥下困難を訴え, 上部消化管内視鏡にて噴門部に2型進行癌を認めた. 生検では, 腫瘍からは中分化型管状腺癌, 腫瘍周囲のるごーる不染領域からは円柱上皮が得られた. 術前診断で噴門部進行Barrett食道腺癌と診断し, 下部食道・噴門側胃切除脾摘術を施行した. 病理組織学的には, 腫瘍はBarrett上皮に囲まれた乳頭腺癌であり, 胃壁には胃弁移植術による筋層断裂, 食道壁にはあからしあに相当する所見が認められた. 本例においては食道あからしあに対する胃弁移植術に起因する逆流性食道炎がBarrett食道を形成し, さらに腺癌が発症したものと考えられた.