日本消化器外科学会雑誌
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胆管癌との鑑別が困難であった外傷性胆管狭窄の1例
西藤 勝小野山 裕彦西村 公志嵯峨山 健高橋 応典中路 太門高尾 信太郎橋本 可成安積 靖友裏川 公章
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2001 年 34 巻 1 号 p. 32-35

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抄録

外傷性胆管狭窄はまれな疾患であり, 悪性胆管閉塞との鑑別が問題となる. 今回, 我々は交通事故後に発症した外傷性胆管狭窄の1例を経験したので報告する. 症例は70歳の男性, 乗用車を運転中, とらっくに追突し右尺骨骨折にて入院. 腹部症状はなかったが, 14日後に黄疸が出現した. 超音波, CTでは腫瘍像は明らかではないが, PTCD造影では下部胆管の狭窄と肝内胆管の拡張を認めた. 減黄後の胆管造影でも狭窄は改善せず胆管癌と考えられた. 胆汁細胞診でも悪性が疑われ, 下部胆管癌を考え膵頭十二指腸切除術を施行した. 摘出標本の所見では, 狭窄部では胆管壁が肥厚しなだらかな狭窄を示したが腫瘍性病変はなく, 組織学的にも悪性疾患は否定された. 以上より, 交通事故の腹部外傷による胆管狭窄と診断された. 本例は腹部打撲の程度が軽かったことも診断を困難とした一因と考えられた.

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