日本消化器外科学会雑誌
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後腹膜腔に発生した異所性気管支嚢胞悪性化の1例
大橋 龍一郎原 浩平松田 英祐
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2001 年 34 巻 1 号 p. 36-40

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抄録

気管支嚢胞が腹部に発生することはきわめてまれである. 我々は後腹膜腫瘤として発見された異所性気管支嚢胞悪性化の1例を経験したので報告する. 症例は69歳の女性で, 腹部膨満感を主訴に来院した. 腹部CT検査では左横隔膜直下から左腎上極にかけて嚢胞状腫瘤陰影を認めた. 嚢胞内部は液体貯留と思われる低吸収域が主体であったが, 一部に実質部が認められた. 経皮的腫瘤穿刺にて多量の粘液状排液がみられ, 細胞診はclass Vであった. 血清腫瘍まーかーはCEAとCA-125が高値であった. 悪性嚢胞性後腹膜腫瘤の術前診断で, 開腹手術を行った. 腫瘤は後腹膜腔に存在し, 横隔膜, 後腹壁, 膵, 腎, 副腎との剥離は容易で腫瘤核出術を行った. 摘出標本の組織像は, 充実部では粘液腺癌を呈し気管支嚢胞が後腹膜腔に発生して悪性化したものと診断した. 手術後に腫瘍まーかーは正常化した.

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