抄録
症例は75歳の男性. 胃癌の診断にて当科入院. 入院時検査でCEA: 132ng/ml, AFP: 75.3ng/mlと高値を示した. 1997年1月, 幽門側胃切除術を施行. AFP産生胃癌tub1, SS, ly2, v1, N1, Stage IIであった. 術後1年4か月頃より頭痛が出現, 同胃癌の脳転移と診断し, 腫瘍摘出術を施行した. 病理学的にも転移性脳腫瘍でAFP産生も確認した. 術後約5年経過した現在も無再発生存中である. 一般的にAFP産生胃癌も, 胃癌の脳転移も予後不良と考えられているが, 本例では外科的治療を選択し良好な予後を得ることが出来ており, AFP産生胃癌脳転移症例においても, 外科的治療が選択肢の1つになりえると考えられた. AFP産生抑制に関与する転写因子ATBF1は, 本例においてもAFP産生を示す腫瘍部位での発現が欠落し, AFP産生胃癌の特徴の1つであることを確認できた.