腹腔内出血を契機に発見された退形成性膵管癌 (巨細胞型) の1例を経験した. 症例は84歳の女性. 主訴は上腹部痛. 腹部US で腹水貯留と膵尾部の径4.5cm大の腫瘤を認め, 腹部造影CTで脾静脈から門脈本幹への陰影欠損と, 胃の大彎側に怒張した血管影を認めた. 緊急開腹術により, 怒張した大網静脈からの出血と判明し, 結紮止血術を施行した. また, 膵尾部腫瘤の組織生検にて, 膵巨細胞癌と診断されたが, 術後30日目に肺・肝転移を認めたため, 根治術の施行は断念した. その後, 膵腫瘤の増大・肝転移は進行するものの, 肺転移は術後1年目には消失するという稀有な経過をたどった. 本疾患は, 血管への浸潤性が高く, 自験例でも脾静脈の腫瘍塞栓による側副血行路の発達・怒張・破綻が腹腔内出血の原因と考えられた.本疾患の手術適応については, その極めて高い血行性転移率を考慮し, 慎重に検討する必要がある.