日本消化器外科学会雑誌
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慢性に経過した憩室炎によるS状結腸閉塞の1例
本橋 英明小畑 満森本 慎吾加藤 俊介桑山 隆志岡本 直子石田 孝雄杉原 健一
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2004 年 37 巻 12 号 p. 1939-1943

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抄録

症例は86歳の女性で, 腹痛を主訴に外来受診し, 腹部単純X線検査にて腸閉塞と診断され入院となった. ガストログラフィン注腸検査ではS状結腸に高度の狭窄が見られ, 腹部造影CTで同部位に浮腫性変化による壁肥厚と憩室を認めたため, 憩室炎による腸閉塞と診断した. 大腸内視鏡は, 腸の屈曲が強く病変部まで挿入できなかった. 開腹するとS状結腸周囲は炎症が激しく, 強固に癒着していたが剥離可能であった. 口側の大腸は著しく拡張していたため大腸亜全摘を施行した. 切除標本の肉眼所見ではS状結腸は約6cmの壁肥厚を伴う狭窄が見られた. 病理組織学的所見では異型性のない大腸粘膜と, 筋層の肥厚, 著しい炎症細胞浸潤が認められ, 憩室による筋層の肥厚に, 浮腫性の変化が加わって狭窄がおきたと考えた. 悪性所見は認めなかった. 大腸憩室症の合併症は多彩であるが, 腸閉塞となり, 手術を要した症例の報告は少ないことから, 文献的考察を加えて報告する.

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