抄録
症例は72 歳の男性で, 56歳時に胃癌で胃全摘および脾摘を受けている. 上腹部痛を主訴に当科を受診し, イレウスと診断した. イレウス管からの造影で空腸に閉塞を認め, 癒着性イレウスを疑って開腹術を施行した. 径5cm大の膵尾部腫瘍が横行結腸間膜を超えて空腸に直接浸潤していた. 膵体尾部・左副腎合併切除, 空腸部分切除, 横行結腸部分切除を施行した. 病理組織学的には膵尾部の中分化型管状腺癌で, 空腸と左副腎に直接浸潤し, 進行度はstage IVaであった. 術後3 か月目に傍大動脈リンパ節再発を認め, gemcitabineによる全身化学療法を施行中で, 術後13か月目の現在生存中である. イレウスで発症した膵癌は本邦では自験例を含め10例のみの報告で, 空腸イレウスで発症したのは自験例のみであった. 小腸イレウスの原因疾患として, 膵癌も鑑別診断の1つとして考慮すべきと考えられた.