抄録
症例は66歳の男性で, 約10kgの体重減少, 腹痛で当院を受診した. 腹部CTで腹水貯留と腹部大動脈周囲リンパ節の腫脹を認め, 直腸診でダグラス窩に腫瘤を認めた. 胃内視鏡検査では, 丈の低い隆起性病変を認め, 病理組織ではGroup Vであった. 癌性腹膜炎を伴う進行性胃癌と診断され, 腹水コントロールを目的として, 腹腔内リザーバー留置術が施行された. 術後, CDDP100mgが週1回, 計3回腹腔内投与された. TS-1 (120mg/day) の投与法は, 2週間内服, 1週間休薬を1クールとした. 投与開始後, 最高3,316ng/mlあったCEAの値はすみやかに下降し, 腹水も消失した. 直腸診でのSchnitzler転移は陰性化し, 腹部CT上の腹部大動脈周囲リンパ節転移も消失した. 胃内視鏡検査でも癌病変の著しい縮小を認めた. 治療開始1年10か月後の現在でも, CRは継続しており, 患者は外来化学療法で良好なQOLを保っている.