40 巻 (2007) 11 号 p. 1839-1844
症例は65歳の女性で, 嘔吐, 食欲不振を主訴に来院. 腹部CTで小腸壁の限局性肥厚およびその口側小腸の拡張, さらに腹膜播種と考えられる軟部陰影を認めた. 小腸造影X線検査によりトライツ靱帯より約1mに全周性の狭窄を認めた. 胸部CT上右下葉, および左上葉に直径13mmと5mm大の境界明瞭な2個の結節を認め, 転移性腫瘍と考えられた. イレウス症状解除の目的で空腸癌部位の小腸部分切除を施行した. 開腹により多数の結節状の腹膜播種を確認した. 空腸腫瘍は5×3cm全周性の隆起性病変で粘液腺癌であった. 深達度は漿膜に達していた. 術後, TS-1経口投与により化学療法を開始した結果, CT 上, 肺の転移結節は次第に縮小するとともに腹膜肥厚像も減退した. TS-1療法を2年間継続した現在も経過良好である. 小腸癌は発見が遅く予後不良であるといわれているが, 今回末期がんであるにもかかわらずTS-1が著効を示した小腸癌症例を経験したので報告する.