はじめに: 術後合併症として肺血栓塞栓症は入院患者の予後に大きく影響する重要な懸案事項である. 方法: 2000年1月から2007年6月までに消化器外科術後に経験した急性肺血栓塞栓症19例を対象とし検討を行った. 結果: 発症率は同時期の全身麻酔下消化器外科手術の0.30%で, 平均年齢68.8±10.6歳, 平均BMI 24.0±2.5, 3例が男性, 16例が女性で, 15例が悪性疾患, 4例が胆石症であった. 術後早期の呼吸困難や胸部不快あるいは急性循環不全の症状に加え, 低O2・CO2血症, 心臓超音波検査による右心負荷所見が特徴的であった. 確定診断には簡便かつ低侵襲である胸部造影CTが有効であった. 肺血栓塞栓発症後は抗凝固単独あるいは血栓溶解併用療法が行われ, 死亡例はなくいずれも軽快退院した. 以後, ワーファリン内服による外来経過観察にて塞栓症の再発は認められていない. 考察: 過去の報告と比較し我々の検討結果における肺血栓塞栓症患者の予後が良好であった理由として, 肺血栓塞栓症予防ガイドライン施行後の器械的予防の徹底, 発生後の早期発見・早期治療開始などが挙げられる. 今後も肺血栓塞栓症の高危険群に対しては薬物的予防法も含めた十分な対策を行い, いかなる手術症例であっても術後肺血栓塞栓症は発症しうると考えられることから術後早期のバイタルサインの変化に対して常に本疾患を念頭においた早急な対応が望まれる.